底に秘めた力│ベントレーの歴史でもっとも重要な意味を持つモデルとは?

Photography: Alex Tapley


 
走りの質もそれまでのプレミアム・モデルとはまったくの別物だった。快適にチューニングされたエアサスペンションは魔法のじゅうたんのような乗り心地をもたらすいっぽう、ドライビングモード次第ではハードコーナリング時のロールがしっかりと抑えられ、ワインディングロードを意のままに駆け抜けることができた。しかも、W12エンジンのパワーとトルクは圧倒的で、0-100㎞/h加速を5秒以下でクリアするとともに、最高速度は320㎞/hに迫った。つまり、スーパースポーツカーに匹敵するパフォーマンスを備えながら、インテリアは5つ星ホテルを彷彿とする豪華さで、うっとりするような乗り心地とパッセンジャーのかすかな吐息さえ聞こえてきそうな静粛性を実現していたのだ。そうした魅力は、おそらくいま乗ってもまったく色あせていないことだろう。
 
そもそも前述したパフォーマンスは現代のどんな水準をあてはめても第一級と評価できるもの。快適性やハンドリングにしても、スーパースポーツカーではなくあくまでもラグジュアリーなグランドツアラーとして捉えれば文句の付けどころがないはず。ビスポーク・プログラムで選び抜かれたウッドとレザーは、その華やかな色合いとともに見る者の目を奪わずにはいられないだろう。


 
コンチネンタルGTでもうひとつ重要なのは、イギリスらしいラグジュアリーの世界とドイツの優れた自動車技術の融合にある。ドイツのプレミアムカーが高性能で信頼性が高いことは誰もが認めるところ。ただし、ドイツ人の質実剛健さを反映したそのデザインは、プレミアムブランドといえども華やかさに欠けた。ここに、高級車作りに長い伝統を誇るイギリスのクラフツマンシップが足しあわされたのだから、もはや完全無欠といっても過言ではない。アウトバーンで磨かれたメカニズムが、ベントレー伝統のグランドツアラーというコンセプトに見事にマッチしたこともファンにとっては幸運だった。
 
ベントレーはこの成功を糧とし、その後も同様の手法で4ドア・サルーンのフライングスパー、SUVのベンテイガなどを続々と投入。コンチネンタルGTは昨年3代目に生まれ変わり、フライングスパーも先ごろ3代目が発表されたばかりだが、いずれも目映いばかりの輝きを放っていることは皆さんもご存知のとおり。イギリスとドイツの幸福なマリアージュは、ラグジュアリー・ブランドの代表として今後も君臨し続けるだろう。

文:大谷達也 Words: Tatsuya OTANI

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