長距離ドライブのためヴィンテージベントレーの魅力とは?前編

Photography: Tim Andrew

このショートシャシー・ベントレーは、ベントレーボーイズとして知られるウルフ・バーナートのロードスターの中に、長距離ドライブのための多くのアイデアを詰め込んである。ヴィンテージ期のベントレーは、どれも運転しやすい車だとはいえないだろう。そのどれもが特有の癖を持ち、日々それらを扱っているスペシャリストたちでさえ、ギアボックスの操作なんぞは厄介だと認めている。もちろんこういったこともヴィンテージ・ベントレーの魅力であるのだが⋯。
 
そしてこれこそが、現在業界をもっともリードしているスペシャリストのひとり、英国中部ラグビー近郊のVBEレストレーションのティム・クレスウェルが、今よりほんの少しドライバーに優しいヴィンテージ・ベントレーを造ろうと決心した理由だった。彼が意図しているのは、アメリカのコロラド・グランドのような、あるいは北京ーパリのようなロングドライブを楽しむことができるヴィンテージ・ベントレーだ。
 
その車は、おそらくW.O.自身も認めるであろう、運転操作を改善する多くの微妙な調整が施されたものだ。まず5.3リッターエンジンとオーバードライブ付きのギアボックス。さらに、ウルフ・バーナートのために造られたワンオフ・デザインをベースにした、個性的なボートテールボディの架装などだ。ティムにこのインスピレーションを与えたバーナートの車は、シャシーナンバー3909、スーパーチャージャー付き4 1/2リッター、ガーニー・ナッティング製を架装し、1930年7月にデリバリーされた。



その車は現在、アメリカで健在であり、今も当時のコンディションを保っている。それは、シャシーを覆うための深いサイドバランスにも、ボンネット側面と同じ意匠の細かいルーバーが付いた、ヴィンテージ期のベントレーとしてはめずらしい軽快なルックスを持っている。またその兜のようなフェンダーデザインは、ヴィンテージ・ベントレーに造詣の深い歴史家であるクレア・ヘイが解説するように、リアフェンダー後端の跳ね上げが「たいへん挑発的」である。

「とてもユニークでエキゾチックなルックスだ」と、ティムはバーナートの車に熱狂する。「しかしレプリカを望んだわけではなく、それは不可能だった。なぜなら私が選んだシャシーは3リッターのもので、ホイールベースは9フィート9 1/2インチだ。ところがバーナートの車はブロワー・ベントレーのものだから、ホイールベースは10フィート10インチと長い」
 
ティムは手元に残っていた、モディファイしてもヴィンテージ・ベントレー関係者から文句が出ることはないだろうと思われるくらいの、ボロボロの3リッターをベースに使うことにした。

「元々はそれをレビルドするつもりでいたんだ、普通のヴァンデン・プラのツーリングボディで⋯。ところが次第に何か本当にスペシャルなものを造りたくなってきた。そしてそれこそが私がバーナートの車を思いついたきっかけだった。私の知る限りかつてヴィンテージ・ベントレーのシャシー上にそれを再現した者は誰もいなかった。しかしながら、ショートシャシーなので、最終的にボディがずんぐりしてしまう危惧があり、これは避けたかった。そこで私は、私の父の友人でデザイナーの、クリフ・ラデルの助力を得て一緒にデザインした。彼はジャガー社でXJ40とXJ220に関わった経験がある。個人的な意見だが、私たちは最終的には車をバーナートのオリジナルより、むしろよく完成させたと思う」

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers ) Transcreation: Kosaku KOISHIHARA( Ursus Page Makers) Words: Mark Dixon 

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