長距離ドライブのためヴィンテージベントレーの魅力とは?前編

Photography: Tim Andrew


 
VBEのワークショップは、ラグビーとノーザンプトンの中間の、周りは農場ばかりのカントリーサイドにある。工場の外で清涼な冬の冷気に和みながら私たちは話をした。ペトロネラはもちろんハンサムなマシーンだ。なぜペトロネラなのか?ティムはニヤッと笑って説明しはじめた。

「それは私の父方の、祖母の名なんだ。彼女は女優だったんだ。1929年ごろ、遊び人達とビーチでブガッティなんかとレースしたらしい。ペトロネラは彼女の芸名で、僕の父はいつもその名前を車につけたがっていた。父は2017年に亡くなったけれど、自分は今回多分良いことをしたと思うよ」
 
ティムとクリフはこの車のフォルムについては成功したと思う。バーナートのオリジナルは後部にディッキーシートを持っていたが、彼らはこれを省き、短い3リッターシャシー上に、W.O.時代のベントレーに存在していたら最も魅力的な仕様の一台に数えられるに違いない、コンパクトで力強い外観のロードスターを創造した。ことによれば最も魅力的かもしれない。



「晩年のヴィンティッジ・ベントレーの一例として、バーナート・ロードスターはかなりアール・デコ風の外観を持っていた。それは今回、リアフェンダー後部の跳ね上がりを強調することによって、よりセクシーになった。フェンダーとタイヤのギャップを縮め、ボンネットのラインをできるだけフラットにした結果、3リッターもしくは4 1/2リッターよりはむしろスピードシックスに近くなった」とティムは語り、さらに続けた。

「私たちは今回、作業をより簡単に行うため、ボディデザイン全体をコンピューターで精査した。この手法を用いたことで、実際にパネルの加工を始める前、すでに外観がどのようになるかが正確に把握できていた。特にフェンダーは正確さを期すことが難しかった。なぜなら、私たちはできる限りフェンダーとタイヤのクリアランスを小さくしたかったからで、それはヴィンテージ・ベントレーのロングストローク・サスペンションを使用する場合、容易な作業とはいえない」
 
ティムによれば、ボディは最新テクノロジーを使ってデザインされたが、製作自体は伝統的な方法で行われた、少なくともほぼ伝統的な作業だった。



「フレームの木骨は、強度を得るために積層加工によって作られた。それぞれの薄板を金属製の治具上で積層し、接着によって固定してフレームにする。信じられないほど強固で、まずまず軽い。私が目指したほど軽くはなかったが、とにかく非常に堅い。強固すぎるために、一定量の動きを可能にするシャシーマウントを考案する必要がでてきた。そうすればシャシーは自由自在に曲がることができる。そうでなければ車のハンドリングは破滅的になっただったろう。ボディフレームはとても強いが、現代の車と衝突した場合はもちろん負けるに違いないが⋯」
 
この木骨には、伝統的なイングリッシュホイールで成形されたアルミパネル製ボディが載る。塗装は地元のスペシャリストであるソウザン・ボディズのグレッグ・ハウエルに依頼した。

「たとえばフレームを覆うサイドパネルとボンネット側面のルーバー、それに兜型のフェンダーなど、私たちが必要な工具を持っていない特定な作業については外部に依頼した。しかし全体の8割は私たちの工場内でつくられたと思う。ボディワーク以外では、ラインボーリングとシリンダボーリングを除いたエンジン作業は、すべて私たちでやった。問題は適正な技術を持つ人間を探し出すのが難しいことだ」

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers ) Transcreation: Kosaku KOISHIHARA( Ursus Page Makers) Words: Mark Dixon 

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