エアロバティック同乗飛行体験記|ワールドチャンピオンと、大空へ。

Photography: BREITLING JAPAN, Takeshi TAKAGI (SIGNO), Katsunori KISHIDA



いざ、エアロバティック飛行体験へ


同乗体験フライトは、機長のブリーフィングから始まった。室屋機長が、搭乗に際しての注意事項や予定している飛行内容について説明。未知の体験に緊張は高まるかと思いきや、室屋選手の優しい眼差しと穏やかな言葉遣いはこちらの昂る気持ちをむしろ落ち着かせてくれる。なるほど、信頼感とはこうやって生まれるのかと、安心して身を委ねることにした。



ブライトリングのネイビー×黄色のカラーリングが眩い、あたらしい複座式の機体。その前席を体験フライトのために使用するのはこの日が初めてとのこと。機長は後席に、私は前席に。離陸後はまずは景色を楽しむかのように「紅葉がきれいですね」など和やかに話しながら上昇する。このときはまだ身に着けたブライトリングの代表的モデルであるナビタイマーの文字盤を見て時刻を確認する余裕もあった。大空で遮るものがないキャノピーの中、陽射しが眩しい上空でも視認性の良さを確保する両面無反射コーティングとはこういうものかと、あらためて知ることができた。



世界初の航空計算尺付きクロノグラフとして1952年にデビューしたナビタイマーは、パイロットからの絶大な信頼を誇る。着用モデルはナビタイマー オートマチック 38。ケース径は38mmで女性の腕にもフィットする。

雲を抜け5000フィート以上へ達したところで一瞬降下し、フワっと無重力の状態になる。この際にシートベルトで体がしっかり固定されているかどうかをチェックする。体はしっかりシートに固定されていることが確認できたので、いざエアロバティック飛行体験の始まりだ。

ちなみに機長は後席で操縦するためメインの計器はすべて後席に備わる。しかし私が乗った前席にも簡易的な計器があり高度や傾きを知ることができるほか、機長の動きに連動する操縦桿とペダルも装備されている(もちろん前席で操縦桿を握ることはご法度)。つまり、室屋選手がどのように操縦しているかを、操縦桿やペダルの動きを通してこの目でも見ることができるのだ。


話をエアロバティック飛行に戻そう。宙返りはもちろん、各種ターン、360度のロール、90度ごとのロール、錐揉みなど、緩急を付けながらさまざまな技を体験することができた。懸念していたGについては、私の場合は室屋選手曰く最大で4G程度とのこと。「いまからちょっとGがかかりますよ」という機長の呼びかけに、グッと下腹に力を入れて堪える。少し気を許すと、首がガクンガクンと揺れてしまう。




レッドブル・エアレースでの最大重力加速度は12Gというから、おそらくかなり手加減してくれたと思うのだが、身体への負担は相当かかっていたに違いない。搭乗中はときに「キャー」などと叫んで、その貴重な体験を満喫していたにもかかわらず、約5分のフライトを終えて地上に戻ってからは、身体の調子が何かおかしい。身体のどこか違うところに偏ってしまった内臓や血液が、じわりじわりと戻ってくるような感触だ。例えるなら、コーナリングやブレーキングでエンジンオイルが偏ってしまったような感じだろうか。


このようにフライト中のみならず、フライト後まで影響を及ぼすGに耐えうる身体づくりはもちろん日頃の鍛錬の極みだろうが、精密機器である腕時計づくりはさらに言うに及ばず。世界の航空史とともに歩んできたブランドならではの技術と性能を、パイロットは信頼するのだということを実感した。世界の大空を飛ぶ室屋選手、それを支えるチーム力、チームをバックアップするパートナー、皆の信頼関係があるからこそ、総合力として最大限のパワーを発揮することができるのだ。

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