ベントレーが生み出すV8エンジン│色褪せない魅力を持つ60年の歴史

Bentley motors


 
1965年発売の新型Bentley Tシリーズには初代V8エンジンを流用できなかったため、Tシリーズ向けにV8エンジンの設計が見直された。エンジン開発チームはパフォーマンスの向上に力を入れたが、Tシリーズのボンネットはそれまでのモデルより低く、その下のスペースに収まるようにエンジン全体のコンパクト化も図られた。 

1971年にはストロークが3.6インチから3.9インチに延長され、排気量が6¾リッターに拡大。現代に継承されるこの排気量によって、トルクが飛躍的にアップ。 

1980年、ミュルザンヌの登場に伴い、V8エンジンに大幅な改良が必要となった。厳しさを増した排出ガス基準をクリアし、前面衝突時の乗員安全性を向上させることが最重要課題となっていた。乗員の安全確保の一環として、衝撃吸収タイプのウォータポンプを搭載した結果、エンジン長が10.1cm短縮された。 


V8エンジンが最も様変わりしたきっかけは、ミュルザンヌ ターボの登場であろう。6¾リッターエンジンに大型のシングルターボチャージャーが搭載された。1920年代、ティム・バーキンが走らせたブロワー以来の、過給エンジン復活となった。シングルターボの採用によって出力とトルクが格段に向上したが、そのシングルターボも後にツインターボに取って代わられることとなる。

以降、V8エンジンにはフューエルインジェクション、可変バルブタイミング、気筒休止などが次々と導入された。出力は徐々に向上して500bhpを上回り、トルクは1000Nmを超え、当時のLシリーズに搭載されたV8は、自動車エンジンの中で世界最強のトルクを誇っていたのだ。 

1998年からは、クルー工場の近代化に伴って生産台数が増加し、V8エンジンもさらなる進化を遂げた。その成果が顕著に現れたのが2008年式ブルックランズ V8。搭載されたV8は、50年近く続いてきたV8とは一線を画し、出力/トルクともに200%近くアップしていたものの、そのデザインルーツが1959年式初代V8にあることは一目瞭然であった。

現在でも、ベントレーでは心臓部となるエンジンは、英国クルーで一基ずつハンドビルドされている。ミュルザンヌ リムジンの現行6¾リッターV8ツインターボエンジンは、エンジン専門の技術者で構成された少人数のチームによって各部品の選定と取付が行われている。




エンジン内部の重要部品は、エンジンが限りなくスムーズに回転するようバランスを考え、ひとつひとつ組み合わされていく。この技術を完璧にマスターするまでには何年も経験を積まなければならない。組み上がったエンジンは徹底的な試験の後、数十年続いてきた伝統に則り、担当技術者の署名が入れられる。 

最新の6¾リッターV8エンジンは、圧倒的なパワーと優れた燃費性能を兼ね備えている。ドライバーズカーであることを強く意識したラグジュアリーセダン、ミュルザンヌ スピードは、最高出力537PS、最大トルク1100Nm、最高速度305km/h、0-100km/h加速4.9秒という驚異的な性能を発揮。

コンチネンタル GTとベンテイガには、排気量を小さくした4.0リッターのV8エンジンを搭載。轟くようなエグゾーストノートで独特の存在感を放つこのツインターボは、最高出力550PS、最大トルク770Nmを発揮するのだ。

ベントレーは、これからも美しいエンジンサウンドを響かせてくれるであろう。

 

オクタン日本版編集部

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