金属プレートにポルシェを彫るフランス人アーティストを訪ねて

パリから高速11号を西に。シャルトルをヌケてさらに行くとル・マン市。そこを降りずにさらにしばらく行くと、ロワール川の流れるアンジェに到着。アンジェには13世紀の城がある古い街だ。ここにポルシェをモチーフとした作品を作るアーティストがいるというので訪れた。

コランタン・デュ・シャノワ(Corentin du chatnoir ) 氏。ラストネームがシャノワ、黒猫という意味だ。そこから"クロネコ・デザイン"を立ち上げたのだ。
コランタン氏は金属プレートにポルシェを彫っていく作品を展開している。

作品を作るきっかけとなったのは、ふと、自宅トイレに何か飾りが欲しいと思い、そこにルマンのブガッティ・サーキットをモチーフに金属をベースにして制作してみたのだ。これにはまって、次々と作品を生み出していった。次のモチーフは愛車のポルシェだ。この話は2,3年前の話でそれほど古い話ではない。コランタン氏は絵を描くのが好きだったが、それまでは普通の会社員だったそう。


ブガッティ・サーキットがモチーフの作品。ターン11,12の”S”Bleus 付近に赤く光る部分は、動いてコース上を走っているイメージになる。

このポルシェの作品が好評で近くのポルシェディラーで展示。そのディーラーにきたお客さんが「自分もほしい」とオーダーが入るようになり、このシャノワ・デザインを立ち上げた。鉄板を削るのは容易ではない。そこで彼は比較的簡単に削れる技法を開発した。それがなければ、とても数多くの作品作りは出来ない。現時点ではその技法は内緒で見せてはもらえなかった。


製作風景、と言うかどのように削っていくのかを実演してくれたコランタン氏。手元だけ見ていると、削る範囲を間違えることがあると過去の失敗談を苦笑いで話してくれた。

ポルシェをはじめとするオーナーで、彼の作品を気に入るとオーダーをする。自分の愛車、時にはそのオーナー自身もその作品の中に描かれるのだ。コランタン氏のこだわりで使用されるスチールは、ポルシェで使用されているものと同様。表面には錆が浮き、削られたところはメタルの銀色。所々、色が付けられてコントラストとなる。この金属感が車のイラストと相まって作品の質感を上げているというわけだ。


金属をカットしてスピードを表現する技法。

まさに、これがコランタン氏の作品の魅力といえよう。ベースとなる金属を錆びさせて、それが赤さびだったり、黒さびだったり、そこに削り込んで本来の金属の色が出る。一つ間違えて余計なところを削ってしまうと、それは修正がきかないので廃棄処分となる。そういった失敗をすることがあるのか?

「あるよ。そこの山が失敗の山だよ」山というのは大げさだったが失敗して廃棄されたプレートが何枚か重ねられていたのは事実だ。


アトリエに飾られたフラット6をテーマにした作品。

最初に作られたサーキットをモチーフにした作品ではLEDが埋め込まれて、車が走っているようにライトがサーキットを駆け抜ける仕組みになっている。現在これをもっとアナログな方法でギミックを付けようと試行錯誤で取り組んでいるという。

金属の質感が大好きでそれを自在に操れるようになってきたコランタン氏は、アタッシュケースをはじめ実用的なアイテムにも着手し始めた。彼の想像力は広がっていく一方だ。

https://www.chatnoir.design

写真&文:櫻井朋成 Photography&words: Tomonari SAKURAI

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