サソリの刺激を体感せよ│70周年を記念しアバルトが富士スピードウェイを埋め尽くす

Ryota SATO

2019年、創業70周年を迎えたアバルト。不屈の精神と情熱をレースの世界へ捧げたカルロ・アバルトによって設立され、そのエンブレムに輝くサソリは彼の星座に由来している。アバルトの歴史を称え、10月にはイタリアで、日本では11月に「ABARTH DAYS」が開催された。

2019年11月9日(土)、山の空気が冷える朝のこと。富士スピードウェイAパドックに入ってみると新旧アバルトがその「アバルトサウンド」を轟かせ、会場をあたためていた。

ピットを覗いてみると、現行モデルの595や124スパイダーが並んでいる。さらに奥へと進むと、車重560kgで最高速度は215km/hを記録する1000ビアルベロGTや、バブルルーフの750GTザガート、850クーペ・スコルピオン、OT1300、1966年シーズンから1971年シーズンまでニュルブルクリンクやタルガ・フローリオにてクラス優勝していた1000SP、これぞアバルトとも言えよう1000TCRなどが並んでいる。小さなボディから響かせてくる迫力のエンジンサウンドは、まさしくアバルトらしい。





昼には、アバルトが開発したランチア 037も姿を現した。世界中を見ても、ここまでの名車が一挙に揃うことはなかなかないだろう。見るだけでも興奮を覚えるが、この車たちがサーキットを走るというのだから堪らない。 



ウォームアップしているサソリたちを通り過ぎ、ホームストレートへ進むと現行モデルも含め約350 台のアバルトがそこを埋め尽くしている。これは日本各地から参加してきているオーナー達だ。これから始まるパレードランの前に、愛車の写真を撮ったり、ずらりと並ぶアバルトを撮ったりしている風景がうかがえた。小さな車ではあるが、子供も含め家族で参加している人も多い。誰か一人がこの車を好きで、というよりは"家族みんながファミリーカーとしてこの車を好き"というような印象を受けた。





現行モデルでも、もちろんアバルトのきびきびとした走りは受け継がれている。一気にスピードを上げていく人もいれば、マイペースに走る人も。比較的ゆっくりした走行でも、アバルトサウンドは健在だ。パレードランを見ているだけでも、その魅力は見て取ることができた。
 
イベント内では、アバルトに所縁のあるゲストのトークショーや、ライブパフォーマンスなども行われる中、愛車でのドリフト体験や、プロドライバーのサーキット走行同乗体験といったような、走りを楽しむためのコンテンツも用意された。知らない人からすれば、小さなかわいらしい車、というように見えるかもしれないがアバルトは本当に"走るため"の車なのである。


 
フォトブースではカルロ・アバルトの写真の横にたくさんのリンゴが置かれていた。なぜリンゴなのか?それは、カルロ・アバルトがレースのためだけに、リンゴダイエットで30kg減量したからだという。そのような歴史からも彼の走ることへの情熱や、真摯に向き合う人柄などが分かり、さらにアバルトを好きになる理由にもなる。
 
そして、日が落ちた頃には再び博物館級の車がサーキットへ。寒さで人間は身を縮めている中、小さいボディで元気に走り周るサソリたちの姿には、愛おしさすら覚える。アバルトが現在にも継承している哲学のようなものを改めてこの目で見て、サソリの魅力を体感できた1日であった。



オクタン日本版編集部

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