ポルシェ・タイカンの乗り心地に見る EVの位置づけ

Porsche AG

ポルシェが発表したEV「タイカン」には、現在"ターボ"、"ターボS"、"4S"というモデルラインナップがある。しっかりと"ターボ"と刻まれているが、決してターボを搭載しているわけではない。では、それはなぜだろうか?
 
ドイツのプレミアムブランドが次々とEVを投入しているが、そのブランド戦略は各社各様でなかなか興味深い。
 
たとえば、i3 でいち早くEV を量産したBMWは" i "というサブブランドを立ち上げ、コアブランドのBMWと一線を画した。しかも車体はi3のための専用設計。デザイン面でもEVであることは一目瞭然で、BMWブランドとの外観上の結びつきは決して深くない。
 
アウディとメルセデスベンツはEVにe-tronやEQといった特別なモデル名を与えている。プラットフォームに関してはアウディがEV専用設計、メルセデスはエンジン・モデルと共用と分かれるものの、デザイン面では両社ともコアブランドとの近似性を表現しながらEVの独自性を盛り込んだ。


 
つまり、3メーカーともEV とコアブランドの間に一定の距離をとっているわけだが、ポルシェのタイカンはブランディングでもデザインでもエンジン・モデルとの差別化は皆無。それどころか、実際にはエンジンを積んでもいないのにグレード名にわざわざ"ターボ"、"ターボS"を使って既存モデルとの関係性を強調している。
 
その最大の理由は、初のEVであるタイカンを、既存のポルシェとまったく同じ価値観で開発する意図がもともとあったからだろう。0−200km/h加速を26回繰り返しても性能低下がほとんどないことを実証したり、ニュルブルクリンクのノルドシュライフェで7分42秒のスポーツセダンEV最速タイムを記録したのは、その一環といえる。
 
実際に試乗しても、タイカンはポルシェそのものだった。いや、部分的にはこれまでのポルシェを越えているところさえあった。


 
たとえば、その乗り心地。スポーツカーらしい節度あるサスペンションの動き方ながら、路面から伝わるゴツゴツ感がほとんど感じられない。しかも速度域に関わらずフラット感は完璧。パナメーラで認められた、足回りにショックが加わった直後にかすかに残る微振動もまったくといっていいほど感じられなかった。乗り心地のよさにはEVならではの低重心設計が威力を発揮しているはずで、快適性でいえばポルシェの現ラインナップのなかでトップクラスだと思う。

文:大谷 達也 写真:ポルシェ Words:Tatsuya OTANI Images:Porsche

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