ラグビー応援のために4ヵ月をかけてイギリスから来日!│乗ってきた車は?

少し時は遡るが、イギリスからラグビーワールドカップの応援に駆け付けたご夫婦がいた。マーク・ファウエルさんと奥様のスーさんである。乗ってきたのは1997年ランドローバー・ディフェンダーだが、もともとはミリタリーで使われていた救急車のストレッチ仕様。それを3年前に購入してキャンピングカーに改造をしたらしい。

彼らの家から日本に住む兄のサイモンさんの家まで、ドアtoドアで27,835㎞を走破した。道中80%はキャンピングカーで寝泊まりし、他は小さなゲストハウスなどを利用したという。5月1日にロンドンを立ち、9月1日に日本に到着した。ちょうど4カ月掛かったことになる。


 
トラブルはあったのかと尋ねたら、「いや、たいしたことはない。パンクと、クラッチとブレーキの故障くらいさ」と軽くのたまう。詳しく聞くとロシアではタイヤが二つ同時にパンク。サジキスタンの高い山の上ではクラッチペダルがペタペタになってしまい、チェックするとマスタシリンダーのオイルが空っぽに。

仕方がないので町のある300㎞先まで5日間ノークラッチで走り切ったという。さらにエキサイティング
だったのはラフロードでシェイクされてブレーキパッドピン2本が外れて、まったく制動しなくなったこと。車を止めて5㎞ほど歩きながらブレーキパッドを探して自分で修理をしたらしい。まったく大したことだらけ!である。


 
なんで、そんな苦労をしてまで車で日本に来たかったのか、そんなにラグビーが好きなの? と聞いてみた。するとマークさんはこう言う。「35年前に私はアフリカを歩いていた。そこでロンドンからケープタウンまでランドローバーで走り抜けた人に出会い、その素晴らしい経験談を聞いて感動を覚えた」らしい。

マークさんは現在セミリタイアで、奥さんは完全にリタイヤしている。楽しめるのは今しかないと思い立ち出発を決めたらしい。さらに言えばマークさんは4年前のイングランドでのラグビー・ワールドカップでボランティアをしている。これはとてもいい経験になったという。で、次の開催地はどこかと奥さんが聞くので、調べたら日本だとわかった。「これは行くしかない!あなただってそう思うでしょ?」とマークさんは真顔で言う。そうかなぁ?


ドアにはいろいろな場所で撮った思い出の写真でいっぱいだ。

 
このディフェンダーには工夫が満載だ。リア左ドアにはシンクが、右側はまな板を設置できるクッキングスペースに改造してある。プロパンガスはベッドの下に。屋根にはソーラーパネルを設置しており、40Vの発電を行う。晴れた日なら冷蔵庫くらいの電力は楽にまかなえれるので、予備のバッテリーを使うことはほとんどない。

そしてトップテクノロジーはルーフにある黒いジェリー缶だそうだ。小さいコンプレッサーをサイドに置いてあるので、それで温かいシャワーを浴びることができると言う。ドアを開けたままで寝ても、キャンバス地のカーテンが蚊帳のようになってとても気持ちが良い。雨の日でもエアダクトがあるので室内で料理ができる。エンジンはディーゼル仕様の1997年式300Cdi、燃費は8.3㎞/ℓ。電気系やコンピュータ類のトラブルとは「無関係!」と豪語する。


生活空間は実に快適そうだ。もちろん、ガスコンロもある。

 
この車でまたイギリスまで自走で戻るのかと聞くと、さすがに冬のロシアを車で通るのは厳しいとのこと。復路は、車は横浜からサウサンプトンまで船に乗せ、ご夫婦は特急列車を乗り継ぎ、ゆっくりとロンドンまで帰るらしい。
 
イングランド、スコットランド、アイルランド、それぞれのシンボルがボディに描かれているディフェンダー。「朝、紅茶を外で飲むと、本当に気持ちがいいのさ」という彼らの言葉からは、実に豊かな生活シーンが伝わってきた。

文・写真:堀江史朗(本誌) Words&Photography: Shiro HORIE(Octane Japan )

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