イタリアの大統領専用車として愛され続けるマセラティのモデルは?

Maserati

マセラティは、エレガンスで高性能な車を生み出すラグジュアリーカーブランドとして世界中で知られてきた。そして、それを象徴するようにイタリア大統領の公用車としてマセラティ・クアトロポルテが採用され続けている。

1979年 12月14日に、イタリア大統領のサンドロ・ペルティー二のもとへ、3世代目となるマセラティ・クアトロポルテがデリバリーされた。イタリア・ローマにあるクイリナーレ宮殿で開催されたセレモニーでは、当時マセラティの所有者であったアレハンドロ・デ・トマソも参加していた。

ジョルジェット・ジウジアーロによってデザインされた3世代目クアトロポルテは、デ・トマ時代にデザインされたマセラティとしては初の存在であった。1963年のクアトロポルテにインスパイアを受けながらも、スポーティーさは減らし、パーソナル空間の要素は増やすというデザインに仕上げられた。



また、3世代のクアトロポルテは上質で洗練されたインテリアを持つことでも知られる。パワー源としてはV8エンジンを搭載し、225hpを発揮する4.2リッターと、280hpを発揮する4.9リッターから選択可能だった。1979年から1990年まで生産され、2145台が販売されている。

1986年には"ロイヤル"バージョンが登場。ソフトレザーのシートと美しい木目のバーウォールナットがダッシュボードやドアパネルへ贅沢に使われ、電話や収納式のテーブルも備えられた。ロイヤルバージョンは300hpを発揮する4.9リッター V8エンジンを搭載し、51台の生産で終了。

そして1982年に、イタリアは大統領用のクアトロポルテを製造するようにマセラティへ依頼した。1983年に完成した大統領のためのクアトロポルテは、ダークアクアマリンのボディに、ベージュベルベットのインテリアが組み合わされた。リアシートの間には、大統領からリクエストがあったパイプホルダー付きの灰皿が備えられたが、マセラティはそのためにリアシートの改造を施したそうだ。バー、電話も付き、外にいる人とコミュニケーションを取るためのインターコムも付けられた。



もちろん、ボディは防弾で、窓も31mmの厚みのものへと強化された。ルーフは、大統領が外に集まった人々へ挨拶できるようにリアシートの上だけが開くようになっており、危なくないように身体を固定するためのハンドルが作られた。

ペルティー二大統領は、いかなる場所にもこのクアトロポルテで人々の前に姿を現していた。1983年5月29日に、マラネロのフェラーリファクトリーへ訪ねた際も乗っていたそうだ。エンツォ・フェラーリは大統領のもとへ自ら歩んでいかずに、10m離れた場所からクアトロポルテを眺めていたという。当時、エンツォ・フェラーリはマセラティをライバルとして認識していたためである。

今日でも、クアトロポルテはイタリア大統領の公用車として採用されている。現在は、6代目のクアトロポルテへと続いている。ボディはマセラティが特別に作った “Blu Istituzionale"というカラーで、インテリアのトリムはブラックピアノカラーで仕上げられている。このクアトロポルテも同様に、大統領専用車として安全を守ることができるよう特別な施しがされている。



これからも、イタリア大統領に向けてマセラティが特別な1台を製造することは続いていくであろう。

オクタン日本版編集部

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