歴史を味わい、文化を愛でる│土地と人間が育んだ遺産としての時計

機械式時計の基本メカニズムは、約400年前に完成した。まずは塔時計から始まり、やがて小型化して身に着けるようになる。王様や貴族などの権力者はこの小さな機械に熱中し、お抱えの時計師に製作させた。こういった凄腕の時計師の中には、職人を雇い入れて時計工房を立ち上げる人たちも現れる。現存する時計ブランドの多くは、18〜19世紀ごろに設立した小さな時計工房がベースとなっている。
 
スイスの時計ブランドの多くは、ジュウ渓谷など山間部の小さな街で生まれた。働く職人たちは周囲で暮らす人たちであり、代々で同じ時計ブランドに努めている人もいる。そして創業者一族が経営に携わっているブランドもある。機械式時計は必ず、そこに暮らす人々の手がなければ、生み出すことができない。つまり時計ブランドの哲学は、土地と人間が育むものであり、それが遺産となるのだ。
 

フランス国境近くにあるスイス・ジュウ渓谷。この地域は冬になると雪に閉ざされてしまうため、農夫の仕事として時計パーツを製造していた。そこからブランパンのような時計ブランドが生まれた。

特に近年は、この"遺産の価値"をアピールする動きが強まっている。そこには新興ブランドの存在があった。スマートフォン時代になり、時計のアクセサリー化が強まってくると、歴史や伝統に影響されない新興ブランドが俄然優位になる。新興ブランドは、キャッチーな色彩や存在感をアピールするデザイン、画期的なメカニズムで、時計を自由に遊んでいるのだ。
 
しかしだからこそ伝統的な時計ブランドが作り出す"ヘリテージウォッチ"の存在感も、かなり高まっている。歴史的傑作モデルを復刻し、伝統的なデザインを継承することで、他にはないオリジナリティを主張するのだ。


 
こういった時計作りは、守るべき歴史と文化、伝統を重ねてきた老舗ブランドの特権である。しかもヘリテージウォッチを作る事で過去の歴史が掘り起こされた結果、その元となったヴィンテージウォッチに対する注目度も高まる。そして、ブランド全体の価値も高まるという相乗効果を生んでいる。


 
約400 年も前から、機械式時計の基本のメカニズムは変わっていない。そのため定期的にメンテナンスを行っていれば、いつまででも使い続けることができる。しかもそこに伝統的なデザインや機構が加われば、いつまでも魅力を失うことはない。それこそが"一生モノ"の条件だ。

Archives Cartier © Cartier ©Blancpain, Bob Maloubier wearing the Fifty Fathoms

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