最もレアなランボルギーニのクラシックモデル?試乗して分かった残念なこと

Photography:Tim Andrew

ランボルギーニのクラシックモデルにおいてシルエットは最もレアな存在だ。イギリスの『Octane』副編集長のマーク・ディクソンは素晴らしい1台に試乗し、さまざまな事実が残念でならないと思うに至った。

夢のなかを突っ走っていた。視界は妙に澄みきって、色彩は迸るほどにまぶしく、時間はまるで停まっているかのようだった。そのなかを浮かぶようにして走ったあの感覚を忘れることなどできやしないだろう。速度計は270km/hを指そうとしている。前を行くもう2台の金色のランボルギーニが車体をスライドさせはじめた⋯」
 
最も有名なドライブストーリーのひとつはこんな風な書き出しで始まっていた。1977年が明けて間もなく、ジャーナリストのメル・ニコルズは3台のランボルギーニの新車、カウンタックとウラッコ、そしてシルエットを、サンタガータ・ボロニェーゼからロンドンへと回送し、ことの顛末をまとめたのだった。雑誌『Car』に掲載されるや、その情熱的で詩的な作風はたちまち世のエンスージアストたちを魅了した。


 
それにしても、これほどよく知られた自動車の記事に、数あるランボルギーニのなかでも最も知られていないモデルが登場していたということに、少なからず歴史の妙味を覚えてしまう。1976年から79年にかけて、わずか52台と数台のプロトタイプのみが生産されたシルエットは、ランボルギーニ史上最もレアなモデルだ(昨今のビリオネア向け少数限定車は除いて)。写真を見てもらえば分かるとおり、たったそれだけしか造られなかったことが今さら残念でならないと思うのは筆者だけではないはずだ。
 
もうひとつ残念なことといえば、今回の写真がスイスアルプスではなくバッキンガムシャーで撮影されたこともそうだったが、幸いにしてよく晴れてはくれ、"ラメ・コロラド"に輝くリチャード・ヘッド所有の1977年式シルエットは快調に走ってもくれた。このメタリックペイントはベルトーネのストラトスゼロ・コンセプトに使われた色と同じもので、しかもこの色のシルエットはリチャードの車をおいて他にない。非常にレアな存在だ。ゴールドパールのブラーボホイールと相まって、つとに目立って艶やかなオーラを放っており、マッチボックスのミニカーになったとしてもおかしくない。
 
シルエットが登場したころのランボルギーニ社は大きな問題を抱えていた。イタリアという国自体がそうであったように、労働争議と急進的な左翼主義によって会社が機能不全に陥っていたのだ。メル・ニコルズが坦々と書き残しているように、雑誌『Car』の取材陣がサンタガータに到着したとき、彼らが英国へ乗って帰るつもりだったシルエットはいまだ塗装の最中だったという。翌朝になって「3度目のストライキが終わり、ようやく生産が再開した」と彼は記している。

編集翻訳:西川 淳 Transcreation:Jun NISHIKAWA Words:Mark Dixon Photography:Tim Andrew

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