時計愛好家憧れのオークション ONLYWATCH 2019、開催。

「オンリーウォッチ」とは、2年毎に開催される時計のチャリティーオークションのこと。名だたる名門ブランドが、文字通りオンリーワンの時計を製作して参加するのは、その目的が、デュシェンヌ型筋ジストロフィーを撲滅するための研究費用に充てるという、慈善活動のためだから。世界に一つだけの時計には、人を愛し、人のために行動するという美しい精神が宿っているのだ。ィンテージカーと同じように、高級時計の世界でも、オークションが盛んに行われている。

しかし今回紹介する「オンリーウォッチ」は、趣向も規模も異なる。2005年から始まった「オンリーウォッチ」は2年毎に開催され、今年で8回目を迎える。その目的は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの研究を支援するためであり、発案者はモナコ大公のアルベール2世だ。


 
デュシェンヌ型筋ジストロフィーというのは、3500人に一人の割合で発症する変性神経筋疾患で、世界中で多くの子供たちや青少年たちがこの難病で苦しんでいるという。この難病のメカニズムを解明し、少しでも疾患を和らげるために、チャリティーオークションで得た寄付金(これまでに4千万スイスフラン=約43億円が集まった)の99%が、モナコ・デュシェンヌ型筋ジストロフィー協会に寄付され、研究費用に充てられているのだ。
 
このオークションに参加するのは、スイスを中心とした時計ブランドたち。今年は全部で50ブランドが参加しているが、名だたる老舗ブランドだけでなく、独立時計師やラグジュアリーメゾンなど様々だ。ユニークなのは、このオークションのために、"世界に一つしかない時計を作る"ということ。そのため、既存モデルでは実現できない意外性のある時計が出品され、高額で落札されるのだ。


 
今年のオークションは、11月9日にジュネーヴで開催された。今年、最高額で落札されたのは、パテック フィリップだったが、その額はなんと「約3000 万ドル(約34 億円)」。これはオークションにおける腕時計の世界最高額だ。
 
高級時計は必ず人の手から生まれる。人がいなければ作ることができないからこそ、人を愛し、大切にする。だから、難病に苦しむ人々をサポートするためにチャリティーオークションを開催するというのも、極めて自然なこと。そして時計愛好家は、素晴らしい時計を通じて、この活動をサポートできる。それ自体が喜びなのである。

次回よりは実際に落札された時計をご紹介する。

文:篠田哲生 写真提供:クリスティーズ Words:Tetsuo SHINODA Photography:CHRISTIE ’S 左

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