素晴らしき100年を日本でも│シトロエン・センテナリー・ギャザリング

Photography:Junichi OKUMURA、Shinichi UCHIDA、Chizuko UCHIDA、Yoshisuke MAYUMI、Octane Japan

今年、2019年に創立100周年を迎えたシトロエン。世界各地からそれを祝うイベントのニュースが届いたが、ここ日本でもいくつかの記念イベントが実施された。今回はそのなかの一つ、東京・赤坂のアークヒルズ アーク・カラヤン広場をメイン舞台に、プジョー・シトロエン・ジャポンが開催した「CITROËN CENTENARY GATHERING(シトロエン・センテナリー・ギャザリング)」の様子についてリポートしよう。

1986年、つまり都内としてはもっとも早い時期に大規模な再開発が行われた東京・赤坂のアークヒルズ一帯は、30数年の時を経てビルを取り囲む木々の緑の深さにも成熟を感じさせる街となった。併設されているサントリーホールやANAホテルも開業当初に比べて風格を増した印象を受ける。
 
シトロエンの創立100周年を記念してプジョー・シトロエン・ジャポンが開催した「CITROËNCENTENARY GATHERING(シトロエン・センテナリー・ギャザリング)」のメイン会場には、そんなアークヒルズにあるアーク・カラヤン広場が選ばれた。


開催前日、21時過ぎにはすっかり準備が整った。

 
9月17日から23日までのイベント期間中、カラヤン広場には最新と歴代のシトロエンが20 台近く展示され、シトロエンオフィシャルグッズや代官山蔦屋書店のショップ、コラボレーションカフェ、映画上映会などが開かれた。さらに最終日の23日には代官山蔦屋書店での早朝イベントとカラヤン広場までの都心パレードランも行われ、100周年にふさわしい華やかで素晴らしいイベントとなったのである。


 
実はこのシトロエン・センテナリー・ギャザリングにはオクタン日本版編集部も協力しており、編集部に出入りする2CV乗りの筆者と愛車も運営側として参加することになった。本当は1カ月半前から色々と大変だったのだが、ここでは開催前日の16日の様子から話を始めよう。
 
準備は16日の午後から始まった。主催者であるプジョー・シトロエン・ジャポンは最新のC3 エアクロスSUV とC5 エアクロスSUV、そして100周年記念限定車のC3オリジンズとグランドC4スペースツアラーオリジンズを展示車両として広場に持ち込んだ。地下駐車場にはこちらも限定のC3セントジェームスなど3台の試乗車も別に用意されている。プジョー・シトロエン・ジャポンの担当者の顔には売る気、いや、やる気がみなぎっていた。


 
最新モデルの横に置かれたのは見るからにクラシカルな1923年(一説には1925年)の5HPタイプC。戦後すぐにフランス人宣教師が日本に持ち込み、様々な変遷を経て、この15年は倉庫の片隅で長い眠りについていた車だ。つい最近になってプジョー・シトロエン・ジャポンのもとに持ち込まれ、今回、多くの人の目に触れることとなった。


1923年 5HPタイプC

 
会場のサントリーホール寄りにはカフェ仕様のタイプHがキャリアカーから降ろされた。持ち主は埼玉県深谷にあるキャロル。リサイクル法なるものが施行される前、古いシトロエンやプジョー、サーブなどの廃車をパーツ取りとして多数並べていたお店だ。このタイプHは都内のカフェに置かれたり映画に使われたりするなど華々しい経歴を誇るが、このイベントでは展示車両兼編集部の物置として活躍することになる。


年式不明 タイプH

 
広場でオフィシャルグッズや代官山蔦屋書店のショップの造作が急ピッチで進むなか、歴代のシトロエンがオーナーのドライブによって次々と到着し、展示位置へ整列をはじめた。タイプHの向かいの黒いトラクシオンアヴァン11BLはレジェと呼ばれるショートホイールベースタイプ、1952年だから最後のほうのモデルだ。


1952年 トラクシオンアヴァン11 BL

 
その隣には2台の2CV が並んだ。グレーの1955年AZはナンバー付きとしては日本で一番古い2CVである。ちなみに日本に現存する一番古い2CVはトヨタ博物館に展示されている1954年Aなのだが、そのことを筆者に教えてくれたのは、このAZの持ち主の原嶋さんだ。おそらく日本でもっとも2CVに詳しい原嶋さんにはいつも頭が上がらない。


1955年 2CV/AZ


そしてもう一台の白い2CVは筆者の1990年スペシアルである。ワンオーナーの最終型、13万kmを走っているが塗装など主な部分はオリジナルを保っている。オリジナル、それは魔法の言葉だ。例えバンパーにサビが出ていようと、フェンダーに飛び石による無数の傷があろうと許してもらえる。


1990年 2CV/ 6スペシアル

 
少し深い赤を身にまとった1968年のDSは猫目と呼ばれる後期型に切り替わった直後のモデル、右ハンドルの英国仕様だ。オーナーはイベントへの参加経験があまりなく、このDSにとっても晴れ舞台である。ハイドロニューマティックからは早くも油圧が抜けて車高が下がっている。その姿はやはり宇宙船だ。


1968年 DS21パラス

 
クリームがかった白色の1978年アミ8はつい最近レストアを終えたばかりでピカピカ、やはり100周年の展示にはバンパーにサビが出ている車ではなく、このような車であるべきではないのか。そんな思いが脳裏をよぎるがもはや手遅れだ。


1978年 AMI 8

 
濃いグリーンの1975年SMは丸目4灯、つまり日本やアメリカでのオリジナル仕様を維持している。こちらも車高が下がっているが短いリアセクションの印象で宇宙船というより宇宙戦闘機のようだ。


1975年 SM

 
SMの隣には1974年GSが並ぶことになっているが、翌日の搬入となったためにまだこの時点では姿を見せていない。ここに来るはずのGSは今回の展示車の中でも少々特別である。GS ビロトール、つまりツインローターのロータリーエンジンを搭載したモデルで、間違いなく日本には1台しかない。驚くべきことにこのビロトールはオーナーの小幡さん自らの手によって修復され、ナンバーこそ付いていないが自走することができる。 


1974年 GSビロトール


薄いブルーメタリックのCX25GTIはシリーズⅡの1987年モデル。走行距離は20万kmを超えているが非常に綺麗な状態を保っている。オーナーの永野さんは日本シトロエンクラブ(CCJ)が行った100周年イベントを仕切った方で、今回の参加車両の多くを紹介してもらった。永野さんにこそ頭が上がらない。そのあたりの事情は別稿にて。


1987年 CX 25 GTI

 
となりのBXからはネオクラシック、いやベルトーネの時代と呼ぶべきゾーンになる。ベージュの1986年BX16TRSはベルトーネ時代のガンディーニ・デザインに忠実な初期型、通称BXボビンだ。オーナーの本田さんはまだ20代だがBXブレークに乗っていた父親の影響でこのBXを手にいれた。そういえばCX の永野さんのお父さんもBX を3 台乗り継いでいたそうだ。子供の頃に刷り込まれた個性的なスタイリングの残像なのか、それともハイドロニューマティックの乗り心地の魔術なのか、親子2代にわたってシトロエンを乗り継いでいる人は多い。


1986年 BX 16 TRS

 
同じくベルトーネデザインの1998年XMのExclusive。シルバーでピカピカの後期型。オーナーの鈴木さんは筆者の古い知り合いだ。XMだけで15台、シトロエンで数えると30台以上を乗り継いでいる。後期型はXMではなくXmですよ、などと色々うるさいので次のエグザンティアに移ろう。


1998年 XM エクスクルーシブ

 
ベルトーネゾーンの最後を飾るのはエグザンティア。前期型最終の97 年シルバーのSX、正規輸入ではラストとなった左ハンドルモデルだ。エグザンティアから離れられないオーナーはなぜか多い。筆者も実は5台乗り継いだ。伏見さんも購入以来、22年10万kmをこのエグザンティアと過ごしている。


1997年 エグザンティアSX

 
その隣にはベージュの2008 年C6。すでに生産中止から7年が経ったが、久しぶりのシトロエンらしいデザイン、そして最後の輝きを見せたハイドロニューマティックの走りはいまも色褪せず、中古車市場でも比較的高値を維持している。この車の未来は明るい。たぶん200周年にも飾られるであろう。


2008年 C6エクスクルーシブ

 
最後の1台は一気に新しくなり2017年のC4カクタス、C6とは違う意味でシトロエンらしいデザインの車である。過去からの素晴らしい引用だったC6とは異なり、新しいシトロエンデザインを提案し、今日のC3のスマッシュヒットへの道筋をつけた。このカクタスのオーナーはフランス車通で知られる自動車評論家の森口さんの愛車だ。実は2CV乗りの原嶋さんもカクタスを持っている。一般からの人気はもちろん、コアなシトロエン好きが飛びつくあたりにもカクタスデザインの価値が証明されているだろう。


2017年 C4カクタス

 
GS こそまだ来ていないものの16日の21時過ぎに歴代シトロエンの展示は完了した。オフィシャルショップや代官山蔦屋書店ショップも商品が並べられ、アークヒルズカフェのシトロエンコラボ化も完成したようだ。準備はすっかり整った。

文:馬弓良輔  写真:奥村純一、内田俊一、内田千鶴子、馬弓良輔、オクタン日本版編集部   Words:Yoshisuke MAYUMI Photography:Junichi OKUMURA、Shinichi UCHIDA、Chizuko UCHIDA、Yoshisuke MAYUMI、Octane Japan 協力:プジョー・シトロエン・ジャポン

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