悲劇を乗り越え5000馬力のマシンで世界最速記録への挑戦!あるひとつの物語

MECUM

2018年に時速448.757マイル(約722キロ)というピストン車の世界最高速度記録を達成した車がある。記録を打ち立てたのはレーシングドライバーのダニー・トンプソン。マシンの名はチャレンジャー2という。



この車両は、ダニー・トンプソンの父、ミッキー・トンプソンが設計したもの。同じくレーシングドライバーだったミッキーは、1960年にチャレンジャー1 ストリームライナーで時速406.6マイル(時速約654.4キロ)を達成したものの、復路で車両が故障したため記録として残ることはなかった。挑戦の舞台であるボンネビルでは、往復の2度の走行記録の平均で記録を認定するためだ。

1968年、ミッキーは再度記録に挑む。流線形のマシンは新記録の樹立を期待させたが、天候の不順によりこのときも記録更新はならなかった。その後、ミッキーはレーシングドライバーとしての別の活動に注力したため、新記録への挑戦は中断される。

それから20年が経ち、ミッキーと息子のダニーは記録に再び挑むことを考えたが、悲劇が起こる。1988年3月16日に、ミッキーと妻が自宅の前で殺害されたのだ。ミッキーとダニー親子の夢はまたもや物置にしまい込まれることとなる。



しかし、ダニーはその夢をあきらめることはなかった。406.6マイルを記録した50年後に、チャレンジャー2を復活させることを決めたのだ。現代のレギュレーションに合わせるため、マシンには修復や改良を施したが、基本的には変更されていない。全長32フィート(約9.75メートル)、全高は37インチ(約95センチ)全幅はわずか36インチ(約91センチ)。重量は5800ポンド(約2.63t)である。





元の2基のフォード427SOHCエンジンは、V8HEMIエンジン2基に置き換えられ、出力は1800hpから5000hpに増加した。このマシンで2018年8月12日に、ダニー・トンプソンは448.757MPHを記録。二世代にわたる50年間の世界最高速度への挑戦を成し遂げたのだ。







そして2020年1月、このマシンはアメリカでオークションにかけられた。当初の落札予想価格は90万~150万ドル(約9900万~1億6500万円)と見られていたが、結果は予想よりかなり低い56万1000ドル(約6171万円)だった。親子の夢の結晶ともいえる車を手にした次のオーナーは、このマシンでこの先どんな物語を紡いでくれるのだろうか。

オクタン日本版編集部

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