その美しさが故に多くが「塩漬け状態」にされたスポーツカーとは?

Photography:Matthew Howell

近年、様々な分野の事業を行っているアストンマーティンのスペシャルなモデル One-77について振り返ってみよう。そのデビューから11年が経過したが、スリリングなスーパースポーツカーとしてはいまも特別な一台だ。

One-77は数多くの伝説を生み出したスポーツカーだ。あるオーナーは2台目のOne-77を手に入れると、アウターパネルや内装材などをすべてはぎ取り、カーボンファイバー・モノコックむき出しの状態にしたうえで、その美しさを愛でるために自宅に飾っているという。

また、別のオーナーは1台や2台では飽き足らず、10台をまとめて購入したそうだ。また、本来であれば納車前にテストドライブの機会が与えられることになっているが、オドメーターの距離を伸ばさないためにそれを我慢するとともに、手に入れると直ちに除湿を効かせた部屋に保管し、ある種の"塩漬け状態" にするオーナーも少なくないとか。どれもよくできた話だが、私たちが調べた範囲でいえば、どれも真実のようでもある。



“史上もっとも速く、もっとも高価なアストンマーティン”幅広くそう喧伝されてきたOne-77は、販売された77台のうち、実際は投資目的で買った者がほとんどだったのではないのか。そうした疑いの思いを抱いたとしても不思議ではないし、そういう顧客がいたのもおそらく事実だろう。

なにしろ、彼らは自分の金でOne-77を買ったのだ。なにをしようと彼らの自由である。とはいえ、One-77が純粋なドライビングの喜び、そしてエキサイティングな体験のために生み出されたスーパースポーツカーであることもまた事実といえる。その証拠に、One-77を手に入れたオーナーのなかには、この"史上最速のアストン" を積極的に走らせ、公道とサーキットの両方でハードに攻めているとの話もまたよく耳にする。

One-77にまつわる様々な伝説が誕生したのは、アストンマーティンがメディアに取材する機会を与えなかったことも関係しているようだ。このことを不満に思った一部のメディアは事実無根の噂話をねつ造し、それを世の中に広めた、というわけである。なかにはしたり顔で「実はあまり出来がよくないので、アストンマーティンはできれば誰にも試乗させたくないらしいよ」などと耳打ちする輩もいるそうだ。


 
たしかに、かのブガッティでさえ記者発表会を催すのが世の現実である。もっとも、自動車産業界にまとわりつく"三文文士"どもは、ドブネズミのような悪臭を放つのがせいぜい。だから奴らのいうことを信用してはいけない。アストンがメディアに取材の機会を与えなかった理由は明確である。One-77は、生産が始まるよりはるか以前に完売していた。つまり、メディアで紹介される必要などまるでなかったのである。
 
われわれにとって幸運だったのは、ごく少数のOne-77オーナーは信頼のおける一部ジャーナリストに自らの希少なアストンマーティンを託し、真実を明らかにしようとしたことにある。そしてアルカンタラで覆われたシートに腰掛け(見かけよりもはるかにホールド性が優れている)、One-77特有の直線的にカットされた7本スポークのホイールを勢いよく回す機会に恵まれた彼らは、驚くべき事実を見いだすこととなった。


・・・次回へ続く

編集翻訳:大谷 達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words:Peter Tomalin Photography:Matthew Howell

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