BMWミュージアムで見るオートバイの歴史!豊富なラインナップが勢揃い

Photography: Tomonari SAKURAI

BMWといえばボクサーエンジンだろう。第一次世界大戦の敗戦により、航空機の生産が出来なくなったドイツでBMWは生き残りをかけてオートバイの生産に踏み切る。今ではボクサーエンジンの生みの親として有名なマックス・フリッツは、この状況で仕方なくオートバイの設計をしたという。「BMWも、文字通り地に落ちたな」などと言いながら。

1923年パリでお披露目したR32がボクサーエンジンを持つBMWオートバイの幕開けとなった。水平対向の2気筒エンジンとシャフトドライブのレイアウトは一時期他のヨーロッパメーカー同様日本のマルチエンジンのオートバイに押されて消えそうになるも、熱狂的なボクサーファンからの声を聞き入れ現代まで1世紀にわたって受け継がれているのだ。


ボクサーエンジン搭載、BMWモトラッドの起源1923年製R32ボクサー。
 
横に出っ張った水平対向エンジンの低重心、クランクが縦方向でジャイロ効果による安定性も加わり低速から高速まで直線だろうと、コーナリングだろうと思うがままに走らせることが出来るこのオートバイは、世界中に愛され続けている。

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元々、BMWのエンジンは航空機エンジンで信頼性が高かった。それをオートバイの世界でも知らしめるようにレースへ参戦。ドイツ国内をはじめ各地で連戦連勝をつづけ1939年にはスーパーチャージャーで武装したRS255で500ccながら55馬力、200kg以上の最高速度でマン島TTレーズで初めてイギリス以外の外国車として優勝を飾りその地を不動のものとした。BMWのオートバイはそのエンジンだけで無く、車体にも革新的技術が投入されている。今では標準ともなっているテレスコピックサスは、BMWが初めて採用したものであり、この当時まだ少ないリアにサスを搭載しているマシンでもあった。


テレスコピックフロントサス、リアサスを搭載しスーパーチャージャーで武装したマシン1938年R255。

 
BMWはエンジンのマルチ化も進めてボクサーエンジンの登場から、ちょうど60年後の1983年にはパリにて縦置き水冷4気筒のKシリーズを発表。その後、F1エンジンからのフィードバックを活かした4気筒エンジンは一般的な横置き、駆動もチェーンとしてモータースポーツの世界に戻ってきた。75年ぶりのマン島での優勝やスーパーバイクでのワークスとして参戦で活躍している。
 
一時期はボクサーエンジンのオフロード車GSとロードモデルRシリーズ、それとマルチのKシリーズと日本のメーカーに比べラインナップは少なかった。しかし現在は水平2気筒のミドルクラス、後方排気のシステムを持つ単気筒、それに電動のスクーターも含め30種近いバリエーションで展開中。カフェレーサー風のトラッドなスタイルを持つものからエンジン特性は当然ながらサスやブレーキの制御も電子化した1世代先を行くマシンもラインナップに加えている。


R1000RRのフェアリングのデザインの為の1/1モックアップ


BMWのラインナップにある6気筒モデル。2009年ミラノで発表されたConcept6。

中にはカーボンフレームなどコストを度外視した究極のスーパーバイクも展開しているなど、BMWの元気さがうかがえる。現在、ミュンヘンではオートバイは生産されておらず、ベルリン工場に移っているが、BMWミュージアムを訪れればボクサーエンジン生誕の地でその歴史を垣間見ることができるのである。残念なことに取材日はR7の展示がなかったため、また行ってみたいと思うのであった。

写真&文:櫻井朋成 Photography&words: Tomonari SAKURAI

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