現実的な値段で手に入るV12 フェラーリ?都心でも「飼える」2台のサラブレッド

Photography:Paul Harmer


 
365GTC/4が発表された時、そのスタイリングはフェラーリらしくないと批判を浴び、 間もなく"Il Gobbone"(イタリア語で猫背)とあだ名されるようになったが、それは非常にアンフェアな見方である。時を経て、そのエレガントなラインはさらに熟成されたように思うが、おそらくそれは私たちがかなり大きくなった現代のフェラーリを見慣れてしまったからかもしれない。だが当時は、よりスポーツ志向のデイトナに対して、"穏当"な選択肢と見なされたせいで、より高価だったにもかかわらず、GTC/4はフェラーリ・チームの中では二軍扱いされ、販売台数も伸びなかった。
 
GTC/4のV12エンジンは、デイトナと同じくショートストロークの高回転型4.4リッターである。ただし、おとなしいカムシャフトとサイドドラフト38DCOEウェバー・キャブレターを装備し、ウェットサンプで圧縮比も低い。最高出力は340bhp(デイトナは352bhp)だが、GTC/4は150kgほど重く、車重は1730kgとされている。最高速は163mph(約262km/h)、0-60mph加速は6.7秒というから、これはまったく退屈な性能ではない。


 
GTC/4の長所は油圧作動のクラッチ、パワーステアリング、そしてエアコンディショナーを備えていることだ。シャシーはデイトナ譲りでサスペンションは四輪ダブルウィッシュボーン式、ただし5段ギアボックスはトランスアクスル式のデイトナとは違って、エンジン後部に直接取り付けられ、またドッグレッグ式のデイトナに対して一般的なシフトパターンを持つ。
 
ロンドン中心部は、当たり前だがこのような高性能GTを試乗するのに最適な場所ではない。そこで私たちはちょっとずる賢い計画を立てた。フォトグラファーのポール・ハーマーが素晴らしい写真を撮っているうちに金曜の晩の渋滞は解消するはずで、その後に空いたM4を下り、今度はよく知っている抜け道を通ってロンドンに戻るという手はずだ。この2台はケンジントンのラドリー・ミュウズにあるグレアム・ハントの店から借りたもので、素早くロンドンを抜け出すには絶好の場所にある。 

薄暮の光の中に佇む2台のフェラーリは壮観と言うしかない。365GTC/4は、あのレオナルド・フィオラバンティがデザインした上品でいささか保守的な412よりも明らかに威圧的だ。左ハンドル仕様のGTC/4のドアを開けると、コノリーレザーの香りに迎えられる。コクピットはフェラーリそのものだ。モモのステアリングホイール、幅広いコンソールから誇らしげに突き出たクロームのギアレバー、その周囲には古風なトグルスイッチやベンチレーションのレバー、エアコンのスイッチ、そしてラジオ/カセット・プレーヤーが配置されている。中身の詰まったタンのレザーシート(バケットシートは若造に任せておけばいい)に滑り込めば、ドライビングポジションが自然であることに気づくはずだ。
 


いっぽうでリアの"+2"シートは、シートと呼ぶのをためらう程度のものだが、フラットにたためば荷物の置き場としては申し分ない。キーを回し、6基のツインチョーク・ウェバーを何回かあおった後に、特徴的なサウンドのスターターモーターでV12ユニットを揺り起こす。そう、これぞ本物である。


・・・次回へ続く

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Robert Coucher Photography:Paul Harmer

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