見過ごされがち?ハンサムな4シーター フェラーリ│都心で「飼える」V12エンジン

Photography:Paul Harmer

この記事は『都心でも「飼える」V12フェラーリ│訓練された犬のように従順な一台?』の続きです。

GTC/4は1972年に365GT4 2+2に後を譲る。それは続いて400に、さらに400iに進化し、1985年には412に変わる。ここに紹介する車はその系譜の最後、89年式の412である。いわば最終進化型であり、365GTC/4からすればブックエンドの反対側とも言える。そしてこれは最もハンサムな4シーター・フェラーリの一台だ。つい見過ごされがちだが、このシリーズは非常に成功し、最も長く続いたフェラーリである。

17年間でおよそ2900台が生産され、そのうち最後の576台が412だという。シャシーは365GTC/4をベースにしており、エンジンも同様ながら、排気量は4943ccに拡大され、フューエルインジェクションを備えている。最高出力はGTC/4と同一の340bhpだが、最大トルクはより強力で333lb-ft(約450Nm)/4200rpmを生み出す(GTC/4は318lb-ft(431Nm)/4300rpm)。
 
400シリーズは、残念ながらあまり大切にされていないフェラーリで、それゆえあまり多くは生き残っていない。しかしながら、試乗した車は傷ひとつなく、走行距離はわずか3万マイル足らずのめずらしい車である。エレガントなブルーとクリーム色の内装を持つこの車は、アールズコート・モーターショーに展示された車そのものだという。"C"よりボディは大きく、わずかに大きなホイールに240/55VR415サイズのTRXを履いている。後席はより広く、インテリアはずいぶんと現代的になっている。正直にいってあまり魅力的とは言えないが、合理的で実用的だ。



それにしても、この奇妙なレバーはATセレクターだろうか?その通り、これはフェラーリとして初めてGM製3段ATを搭載した車で、またマラネロ初のABS装着モデルでもある。何だかこの控えめでエレガントなジェントルマンズ・エクスプレスがイタリアのメルセデス・ベンツ560SECに見えてきた。 

それが大きな勘違いであることはいうまでもない。エレガントで落ち着いていることは間違いないが、正真正銘、由緒正しいフェラーリである。それはスロットルペダルを踏み込んだ瞬間に明らかになる。それまでの抑えた排気音は途端に背筋がぞくぞくする快音へと変化し、ATの高いギア比に立ち向かうように、V12エンジンはリミット目がけて吹け上がる。


確かに燃料噴射システムのせいで吸気音は抑えられており、"C"ほど感動的な音色でもない。さらに3ATゆえに加速もそれほど鋭くはない。0-60mphは8秒あまり、最高速は150mph(約241km/h)という。だが412は信号グランプリのドラッグスターとして生まれたわけではない。
 
ハンドリングは素晴らしく、ロードホールディングも安定しており、車重が1850kgもあるとは信じられないほどだ。ごく初期のABSはしっかり強く踏むことが必要だが、優れたバランスと扱いやすさのおかげで、知らず知らずのうちに自分で思っていた以上のスピードで走っていることに気づくだろう。


 
伝説的なコロンボ・ユニットの末裔に当たるV12エンジンをフロントに搭載した純血種のGTフェラーリとして、この美しい412は洗練度でも実用性でもほとんど文句をいうところなどない。とはいえそれでも365GTC/4はもっと特別な魅力を備えており、あなたが興味を持つのもこちらのほうだろう。だが、ここで現実的な比較をしなければならない。素晴らしい365GTC/4は412(27万5000ポンド)の4倍以上の値段がついている。しかも、驚くことではないのかもしれないが、どちらも既に売却済みという。

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Robert Coucher Photography:Paul Harmer

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