フェラーリの歴史上で最も重要な一台?美的アイデンティティーを体現したパワフルな「小舟」

Photography:Drew Gibson



車名のMMは、1948年のミッレミリアで166Sが優勝したことにちなんだもので、すぐに、小舟を意味する"バルケッタ"という愛称をジャーナリストのジョヴァンニ・カネストリーニが付けた。デザインしたのは若きカルロ・アンデルローニの下で働くフェデリコ・フォルメンティである。アレマーノによる166Sのデザインを踏襲するはずだったが、どう見ても共通点は少ない。角張ったSに対し、MMは流れるような曲線ですべてを包み込む画期的スタイルだ。もっと重要なのは、166がフェラーリ最初の"デザイン言語"となったことである。エンツォが求めて止まなかった美的アイデンティティーの端緒となったのだ。
 
166MMのシャシーはチューブラーフレームで、フロントはダブルウィッシュボーン、リアはリジッドアクスルと、基本的には125を踏襲していた。だが、ホイールベースわずか2m、車重800kgの"小舟"には、奇跡が詰まっていた。ロードカーとして先行モデルより乗り心地がしなやかになっただけでなく、競技車両としての戦闘力も向上したのである。



心臓部はコロンボが設計した1995cc、60度V型12気筒エンジンには、ウェバー製32 DCFキャブレターを3基(レース仕様の場合。ロードカー仕様の166インターは1基)搭載し、5段ギアボックスを通して出力140bhpを発生。最高速は130mphを超えた。

これほどの性能を誇るので恐ろしく高額だったが(イタリア国内は1 万ドル相当、アメリカでは1 万5500 ドル)、166MMバルケッタは25台製造され、ベルリネッタも6台造られた。加えて166にはSやスパイダーコルサ、インターもあった。何より、166は公道でもサーキットでも同じように優秀だった。つまり、エンツォが思い描いていた、製造→レース→販売、製造→レース→販売…という、ビジネスプランを1モデルで完璧に体現していたのだ。


・・・・次回へ続く

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:James Elliot Photography:Drew Gibson

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事