25台のポルシェ911を乗り継いで辿り着いた一台は?│車が持つヒストリーの重要性

Photography:Paul Hardiman

"ポルシェ911だけでも、25台を乗り継いできた"と話すのは、イギリス人のエンスージアスト マイク・ドビーである。

「50歳くらいでオレンジの991 GT3を乗っていたんだけれど、なんだか見当違いな気がしてきてね。自分にふさわしいのは、もっと古いモデルじゃないかと思ったんだ。古いものは好きだし。ビッグバンパーではなくナローモデルが欲しくて、ショップを訪ねたんだ。2.4Sは2.2よりも実用性があるし、走りも楽しいからそれが良かった。けれど、2.4Sはドナーカーにされていることが多くて、ちゃんと残っているのは2.7RSよりも少なかったんだ」と彼は話す。

そんな中でマイクの眼を奪ったのは、悲しい運命に遭っていた一台だった。オリジナルカラーからブラック、そしてレッドに変えられ、さらにはダックテールまで付けられていた。しかし、素晴らしいヒストリーを持っていたのだ。

「この車は、1972年に2台だけ生産された、ジェミニ・ブルーの右ハンドルモデルのうちの1台であることが分かったんだよ。さらには、マッチングナンバー車であることを聞いて実車を見もしないですぐに購入した。手にしてから、これまでのオーナーをすべて調べたんだ。前のオーナーは34年間も所有していたことが分かったよ」

彼が購入した911Sの驚くべきポイントはそれだけではない。はじめてガソリンスタンドで給油したときのレシートから、すべて残されていたのだ。その年月には、"1972年 12月13日"、"£13.05"と記されていた。

「走行距離は24万マイル以上を刻んでいて、毎日使われていたことがよく分かる。5年前まではね。というのも、前のオーナーがレストアに出したら想定以上にメタルが必要になって、同時にコストが重みすぎて途中で放置したらしい。そのコストは十分この車に相応しいものなのに」

車を販売していたショップ店のアランは、最初この911Sを見た時に「これまで見てきた車で最悪なレベルだ」と思ったそうだ。2年以上をかけてレストアを施し、#8686のファクトリーカラーに塗りなおし、インテリアも元のベージュレザーに張り替えた。

「オーナーを調べてすべてコンタクトを取った。最初のオーナーであるトリスタンは、"車を見るのが待ちきれない"といっていた。彼の家にはじめてデリバリーされた日の写真も持っているよ。当時、彼は25歳だったから色々なことが変わっているだろうね。今度会いにいくんだ」とマイクは続けた。

トリスタンは、車を兄弟であるエドウィンへと売ったそうだ。つまり、兄弟でファーストオーナー、セカンドオーナーが繋がれていった。そして、3番目のオーナーはニックという人物で、彼がロジャーという人物に頼みブラックにペイントしたそう。4番目は、そのロジャーの妻だ。ロジャーが亡くなってから手にして、彼女はオリジナルのパーツを集めていたそう。5番目のオーナーのことは詳細が分からなかったが、少なくとも分かった人たちについてはマイクは会いにいく計画だという。

もちろん、その旅路は911Sという相棒と一緒。車がつなぐ人との出会いもおもしろいものだ。

Words: Paul Hardiman

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