ミウラを作った80歳超の天才エンジニアが開発する本物のスポーツカーに試乗!

Photography: Keishi OKUZUMI


 
前置きがずいぶんと長くなってしまった。そんなジャンパオロがどうして今、“ふたたび”ロードカーを造ったのか。実は筆者はこのプロジェクトが正式に発表される前に本人から直接その理由を聞かされていた。以下、少し長くなるが重要な証言なのでインタビュー内容を抄録しておく。

「今モデナは再び自動車開発の最先端になった。フェラーリが独立をしてその傾向はさらに強まっている。それでも昔ほど刺激的ではない。自分がミウラを作った頃は何にでも挑戦できた。ミウラには反省すべき点もあったがそれ以上に挑戦的な点も沢山あった。何もかもが複雑になった今もう一度ミウラのようなロードカープロジェクトを独力で取り組むのは不可能に近い。とはいえ常に新しいことには挑戦していきたい。もう一度、自分の名前を冠したロードカーを作ってみたいんだ。ミウラのようなスーパーカーは無理でも、もっと繊細でシンプルで誰もが乗ってみたくなるような運転の楽しいスポーツカーなら、培ってきたレースカー製造の技術を活用して作ることはできる。そう、80歳を越える私でも操れるようなスポーツカーなら……」(2014年10月、京都にてジャンパオロ・ダラーラ語る)
 
2016年の11月16日。ジャンパオロの80回目にあたる誕生日のその日にロードカープロジェクトは正式に披露された。念願のロードカーの名はシンプルに「ダラーラ・ストラダーレ」(ストラダーレとはイタリア語で道の意)と予め決められていた。席上ジャンパオロはつめかけた報道陣にこう約束している。「今日からちょうど一年後に最初のカスタマーカーを納車する」。
 
2017年11月16日、「ダラーラ・ストラダーレ」がワールドプレミアされたのはジャンパオロ故郷の地だった。発表は本社ではなくあらたに「ストラダーレ」用として新たに建設されたファクトリー脇の特設会場。新工場はジャンパオロの生家の並びにあり、70年代初頭に独立して初めてファクトリーを構えた記念すべき場所に隣接していた。ジャンパオロのストラダーレに懸けた想いの丈が伺えよう。一年前の約束通りカスタマーカーも同時に本社デリバリーされ、発表後には全員で市内のパレードランを楽しんでいる(初期の限定モデルオーナーを数名招いていた)。車重855㎏、最高出力400馬力!

世界600台の限定車「ストラダーレ」の概要はいたってシンプルだ。ダラーラお得意のプリプレグ式オートクレーブ成形のCFRP(炭素繊維強化樹脂)モノコックに前後アルミニムフレームというスーパーカーの世界では常識的な成り立ちである。フロントアルミニウムフレームとモノコックボディを接合する部分にはプリプレグのプレスモールディング成形を使った。外装パネルももちろんカーボン製。


 
ミドに横置きされたエンジンは軽量かつ強固で耐久性にも優れたフォード製2.3リッター直4エンジンブロックをベースに、ダラーラのエンジニアリング部門が独自の設計部品を織り込みツインターボ化したもの。トランスミッションは3ペダル6速マニュアルもしくはパドル式2ペダル6速ロボタイズドを選択する(左ハンドルのみ)。エンジンやシャシーのマネージメントシステムは長年ダラーラ社と協力関係にある独ボッシュ社との共同開発とした。


 
最高速が280km/h、0→100km/h加速は3.25秒である。最高出力400ps&最大トルク500Nmというエンジンスペックとともに最新スーパースポーツとしては数字的にモノ足りないと思われるかもしれない。けれども乾燥重量わずかに855キロという車体には十二分なエンジンスペックで、パワーウェイトレシオは実に2.14。ダラーラとしては馬力をむやみに上げて加速性能や最高速を競うのではなくシャシーや空力を練り上げることでロードカーとして異次元のパフォーマンスを実現したかったという。それが正にジャンパオロの描いたスポーツカー像なのだ。

基本的にはドアレスのオープン2シーター・バルケッタスタイルがベースとなる。ドアレスとなった理由としては車両軽量化や開発コスト削減が挙げられる。
 
巨大なカーボン製リアウィング(オプション)を装備した状態がサーキットで最も速い仕様だ。ワイパー付きウィンドウシールドを加えたロードスタースタイルやT型タルガトップのクーペスタイル、ガルウィングウィンドウドア付きフルキャノピークーペスタイルを選ぶことができる。フルキャノピーのクーペスタイルを選んでおけば、他のどの仕様への変更も専用工具で自ら行なうことができるという。日常利用を考えればエアコン付きとなるフルキャノピー仕様を選ぶことになるだろう。


 
正規輸入元であるアトランティック・カーズが用意した試乗車は、マットカーボンボディをまとったスパルタンなクーペ仕様だった。カーボンビジブル仕様はオプションで、黒のみならずカラーを選ぶことも可能だ。




今回、アトランティックカーズでは6色から選ぶことが出来た。

文:西川淳  写真:奥隅圭之

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