ミウラを作った80歳超の天才エンジニアが開発する本物のスポーツカーに試乗!

Photography: Keishi OKUZUMI


 
ルーフのないバルケッタ仕様などであればドアがなくとも比較的乗り降りしやすかった。けれどもクーペ仕様のガルウィングウィンドウからの出入りは多少難儀する。シートの股の部分にステップが用意されており、それを目がけてまずは右アシを入れ、ボディショルダーにいったん腰を降ろしてから左アシをミラーに当たらないよう持ち上げつつ身体を海老のように丸めて室内に落としこむ、といった要領だ。出る時はできるだけハンドルに荷重をかけない方が良い。ボディショルダーには常に何かしら身体の一部が触れてしまうので、保護シートを貼っておくのがベターだ。
 
乗り込んでしまうと跳ね上がったガルウィングドアに手が届かない。ベルトを締める前に降ろしておきたい。ちなみにキャノピーのガルウィングウィンドウを内側(ドライバー)から閉めようとするとしっかりハマらないことがある。改善ポイントだろう。


 
インテリアは見るからに必要最小限の装備内容で、シンプルさが際立つ。ダッシュボードやシートはCFRPバスタブの形状をそのまま活用しステッチ入りレザーを張っている。シートパッドもまた必要最小限というべきで、長距離利用には向かない。モノコック一体型のためシートは固定で、それゆえペダルボックスを移動してドラポジを調整する。
 
ロードカーとしては極端に小さなハンドルを握りしめた。すでに心拍数が上がっている。乗りこみに苦労したからもあるけれど、カーボン&アルカンタラのハンドルにはレーシングカーのようにボタンが沢山並んでいたからでもあった。ボタンの機能はウィンカーやライト、車高の選択(レースモード)などである。
 
どこかで見たことのあるような形状のハンドブレーキをおろし、パドルで1速を選んでまずは300PSのノーマルモードで走り出す。軽く踏み込んだだけで早くも車体の軽さを実感できた。車体を左右に軽く振ってみれば、まるで前輪を両の腕で抱え込んだかのようなダイレクトな動きをみせる。早くもフォーミュラ風味満載。路面の近さに車両バランスの良さが相まって、いきなりマシンと一体となれる。

加速も素晴らしい。速いうえに安定感もすこぶるつき。安心できる速さだ。それならば、とスポーツモード400PSを選んで右足を踏み込んでみる。分厚いトルクによって右足の裏が押し返されるような感覚に見舞われた。確かで力強いレスポンスが心地いい。幅広い回転域で自由自在に引き出せる500Nmの恩恵だ。サウンドは典型的なターボカーのそれだった。

文:西川淳  写真:奥隅圭之

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事