地球から月までの3倍!?100万km以上を一台のポルシェと共に走った男の物語

カナダ人のポルシェフリークである、ビル・マッキーチャンとポルシェの関係は並大抵のものではない。彼がポルシェと共に刻んできた距離は100万km以上にも及び、それは地球から月まで行ける距離の3倍にもなるのだ。彼はポルシェ911ターボを44年前に手に入れた。それからというもの、様々な冒険を通して酸いも甘いも共にしてきた。 

「私はアメリカンマッスルカーと共に育ちました。若い頃はオールズモビル442に乗っていました。どこでも注目の的だったけれど、ハンドリングは牛乳屋のトラックみたいでしたね」と笑いながら振り返る。そして、1970年にはじめて買ったポルシェである911Tのことを思い出し、「信じられないほど機敏で、いかによく設計されている車なのだろうかと感じました。性能が素晴らしいだけでなく、コンパクトでありながら快適でもあるのです」とその感動を思い返す。



この体験が、マッキーチャンの人生におけるターニングポイントとなる。シュトゥットガルト生まれのスポーツカーへ心を奪われたのだ。シルバーの911を彼の社用車として購入した。しかし、すぐに彼の目に魅力的なポルシェが飛び込んできた。「1972年、917/10をはじめてCan-Amレースで目にしました。ターボチャージャーを搭載してロケットのような速さだったのです」と話す。そして、数年後にカナダで930ターボが市販化されたのだった。ディーラーで購入しようとしたところ、パワフルすぎるが故に"一度考え直してみたらどうだろうか"とすらいわれたそうだ。しかし、911ターボ以外に幸せを感じられる車はないだろうと彼は思っていたため、決して購入に躊躇することはなかった。ここからは、彼とポルシェの距離を振り返る。

 
1973年 0km
1973年は、石油不足で、どのガソリンスタンドにも長蛇の列ができていた。小型車に乗りかえようとするオーナーが多い中で、マッキーチェンは911ターボ購入を決める。ミッドナイトブルーに、コルクレザーのインテリアが組み合わされた一台だった。この機会を逃すと、これ以上ラディカルなスポーツカーを手に入れられないと考えたためだ。

1976年 23km 初対面のショック
1976年5月、ドイツから350台目の930ターボが空輸されてきた。はじめての対面は空港だったのだが、“色が間違っている”と思ったという。しかし、オーダーには何のミスもない。それはただ単に、長旅を終えてホコリを被っていただけだった。綺麗にしてから、彼の911ターボとのドライブライフが幕を開けた。

1976年 4312km 結婚
ビル・マッキーチャンは愛する人を見つけ、結婚する。

1976年 6245km レースへの情熱
「はじめての長距離ドライブはオンタリオ州からケベック州のトロア・リヴィエールで開催されていたTrans-Amレースまでの横断でした」この時のレースでは、ジョージ・フォルマ―が操るポルシェ934が優勝、2位にも934が入りポルシェファンを沸かせた。そして、レースへの情熱に火が付き、様々なサーキットを周っているうちに10万kmを超えていた。モントレーのヒストリックカーレースを見るために、アメリカ横断は少なくとも5回はしたという。

1978年 1万3800km 世代交代
この年、マッキーチャンの息子クレイグが、家族で経営しているカーペット・クリーニング会社で働き始めた。同年、次男のブライアンはカナダ人レーシングドライバーのルードビッヒ・ハイムラスと共にポルシェ 935 でメキシコシティのレースに参戦し見事優勝を獲得する。父から子へ、レースへの情熱はしっかりと受け継がれていた。



1981年 8万8713km 家族の絆
「1981年から今日に至るまで、息子のブライアンはレースへの挑戦を続けています」と誇らしげに話す。自分がいつかこの世を去った時は、最愛の911 ターボは家族で所有していて欲しいと願っているという。

2006年 64万1312km 不幸中の幸い
物事はいつもスムーズにいくわけではない。この年、例年通りモントレーへ向かっていたところ、ファンベルトのプレートが破損。「南オレゴンの田舎でポルシェのスペアパーツの入手はできませんでした」という。「でも、ファンベルトを修理できる工場を見つけられたのはラッキーでした」。そして、無事に彼は予定通りカリフォルニアに到着し、レース観戦を楽しんだそうだ。

2009年 85万km アクシデント
30年以上、共に幸せな人生を送ってきたとしても、避けられない危機がある。マッキーチャンは、一度だけSUV に突っ込まれポルシェが大破したことがある。ドライブシャフトが破損し、フェンダーはへこみ、コントロールアームが折れるほどの大きな事故だったという。 SUV のドライバーと “おんぼろ” クラシックカーの横に立っているマッキーチャンのところへ、フォルクスワーゲンのエンブレムをつけた一台のピックアップトラックがやってきた。その人物は、フォルクスワーゲン・サポートのエリック。その後、間もなく走行可能となったマッキーチャンの愛車は再びモントレーまで 30時間のドライブを乗り切った。

2012年 100万km アニバーサリー
「ペンシルバニア州ハーシーで行われたオールドタイマー・スワップミートに向かう道中で 100 万kmに達しました。トロントに戻ってからシャンパンも空けてお祝いしました」


 
2020年 125万3584万km 今後の展望
現在、オドメーターは125万3584kmを指している。毎日、その数字を刻んでいっているようだ。現代のスーパーカーなど一切欲しいと思わないそう。そして、こう話す。「930はこれ以上にない、最高のマシンですよ」

 

オクタン日本版編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事