自身最後のレースでル・マン優勝を果たす│ハンス・ ヘルマンと妻との約束

Porsche AG

24時間は 86400秒。しかし、“ル・マン24時間”という場ではそれ以上の何かを感じることができる。忘れることのない、歴史的な瞬間が起こるのだ。小さなエピソードから大きなサクセスストーリーまで、十人十色、喜びや悲しみの感情が24時間の中で交錯する。ル・マン 24時間が開催される時は、いつの時代もレースに魅了された観客一人一人の情熱がひとつとなり、会場を包み込む。そんな瞬間を間近で見て、感じてきた関係者が語るル・マン24時間での武勇伝をご紹介。

ハンス・ヘルマン ドイツ出身ドライバー 1928年2月23日生まれ

1970年 最後のレースで最初の優勝
 「あれは1969 年のことだったと思います。フィニッシュまで残り90分という状況下でジャッキー・イクスと私は毎周激しいデッドヒートを繰り広げていました。しかし、わずかの差で私は優勝を逃してしまったのです。翌1970年にはリベンジを果たすべく、フェルディナンド・ピエヒがパワーアップさせたマシンを開発しました。そして、1年前に屈辱を味わったル・マンで優勝を飾れたことは、特別な思い出として記憶に刻まれています。それは、ポルシェにとってル・マン初勝利であると同時に、自分とって最後のレースでもありましたから。

妻との約束もあり、どのような結果でもレーシングドライバーとしてのキャリアから退くことを決めていたのです。妻はその2、3年前から私に引退を求め続けていました。私たちが失ってきた友人たちのことを思えば、当然の決意だったでしょう。"今は運に恵まれているかもしれないが、そんな運もいつかは尽きる"、と考え始めていた自分がその時はいました。今思い返すと、1970年には色々なことが起こり、私の心は強く揺さぶられていました。ル・マンで優勝した瞬間、男泣きしたかどうかは覚えていませんが、私は感情的な性格なのでもしかしたら泣いていたかもしれませんね」

オクタン日本版編集部

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