過去の教訓を活かして制したル・マン│エンジニアが語る1982年の出来事

24時間は 86400秒。しかし、“ル・マン24時間”という場ではそれ以上の何かを感じることができる。忘れることのない、歴史的な瞬間が起こるのだ。小さなエピソードから大きなサクセスストーリーまで、十人十色、喜びや悲しみの感情が24時間の中で交錯する。ル・マン 24時間が開催される時は、いつの時代もレースに魅了された観客一人一人の情熱がひとつとなり、会場を包み込む。そんな瞬間を間近で見て、感じてきた関係者が語るル・マンでの武勇伝をご紹介。

ノルベルト・ジンガ― ドイツ出身エンジニア ポルシェ917の開発に貢献
□ 1982年  ポルシェ956での勝利

「1-2-3フィニッシュ。それは素晴らしい瞬間でした。新たに956が投入されたばかりだった時、私はかなり控えめに構えていました。ル・マンのように 24時間を完走しなければならないという過酷なレースでは、まず様子を見ることが大切なのです。そのため、956が完璧な展開で勝利を遂げたことには、とても驚きました。これは、私たちが常に与えられていた “宿題” に真剣に取り組んできた結果といえるでしょう。

勝利を果たす数年前に私たちは大きな過ちを犯していたのです。1979 年、まだエルンスト・フールマンがポルシェに在籍していた頃に、彼は私たちエンジニアにこう伝えました。『ル・マンに参戦してみるというのはどうだろうか』と。当時の私たちには失うものなどなかったので、調子よく返事したのですが、持ち込んだマシーンが2台とも途中リタイヤという情けない結果となりました。このような過去もありながら、勝利した1982年のル・マンは、最高のレースとなったのです。シーズンが終わると、ル・マンを制した956はすぐにミュージアムへ納められました。今でもミュージアムの天井で存在感を放っている一台ですよ」

オクタン日本版編集部

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