まるで未体験ゾーンの異次元移動体│トップの刺激を味わうパーシング 8X



搭載されるパワーユニットはMTU 16V 2000M 96L-2638ps/2450rpm+TS100×2機。メインヘルムは静寂が支配している。リズミカルな波音がはるかに流れ来るだけだ。ジャイロはシーキーパーが2基搭載されている。600rpm6.50ノット30.0L/h、10ノットの速度制限域を超えテスト海域へ向かう。1000rpm11.00ノット78.0L/h。ドライブトリムはエンジン回転の上昇に合わせて上昇しはじめる。AUTOモードの「Easy Set」にセット済だ。67トンの巨体をスピードに乗せるには最も効果的なトリムアングルを探り出す必要がある。左右2機計5276psの駆動力を得たプロぺラが推進力に変換する「間」が必要だ。

キャプテンのスキルが問われる水を噛む数秒の勘。船体の傾斜角度すなわちトリムの管理、ドライブユニットの上下アングルによる駆動の伝達効率、そのすべてのバランスが取れた時にエンジンからの出力が確実に駆動に代わり、水の抵抗の少ない水平面に近いエリアで推進力として生かされる。それを探り掴むのがキャプテンの熟練の技だった。ターボラグの激しいF40を操るスキルに似る、時代は移ろい現行フェラーリのF8トリビュートに乗る感覚、今はEasy Set system、つまりAI制御がそれをやってくれる革命である。



カンヌの色鮮やかな街並みを背に水平線に向けて一気に加速。1250rpm12.50ノット119.0L/h。1500rpm16.20ノット178L/h。スムーズで軽快かつ小気味よい加速Gに乗る。プレーニング開始だ。船体後部の水煙は青い攪拌された水色から真白い水煙に代わり始める。1750rpm26.30ノット267.0L/h。白い水煙が勢いよく巻き上げられ美しいルースターテール銀狐の尾が発生する。2000rpm38.60ノット395.0L/h、320nm。ドライブはフルアップの水平ゾーンに。

常に軽快感を伴う加速が絶妙なハルの高バランスを体感させてくれる。手首に軽く反動のあるジョイスティックを倒していく、スムーズなインサイドバンクとともに全長25.55mのノーズが回り込み自分の位置を中心に回頭が始まる感覚、まさにリニア。ターン時のサイド及び後方視界は30度にならんとするインサイドバンクでイン側は流れる海面しか見えない。スムーズな横Gにダイニングテーブルや椅子もその位置をずらすことはない。ダイナミックなターン、これぞパーシングの醍醐味だ。ステアリングでの回頭も痛快そのもの。切り込むにしたがって83フィッターが軽快に反応を示す。波への切込みもフェアウエイライドなソフト感をもたらしている。

ちなみにトランサムデッドライズは20.0度、ディ―プVモノへドロンスプレイレールハルだ。ステアリングはパワーセンタリング機能を持ち手を離すと直進位置に自動的に戻る。イメージ通りのトレース、ターン時の心地よいスライド感、S字の切り替えしから直線加速、そのすべての正確さが生みだす爽快感がパーシングダンシングなのだ。

2200rpm41.0ノット475L/h 航続距離310nm。これが巡航速度だ。静寂を保つ室内、フロントスクリーンから先の海面を見ているだけならこの速度で走行している感覚はない。MAX 2450rpm48.0ノット520.0L/h 航続距離285nm。AUTOモードですべてを管理し、バランスがとれた時の美しい水煙、それは確実に水を掴み速度に乗っていく証。パーシングエクスタシーへの誘いが始まる。

ヘルムステーションから振り向くとヒールしたサロンの先でルースターテールの中に地中海のコバルトブルーが映り込みプロバンスの鮮やかな色彩のリゾート群の色調が重なり合い蜃気楼のようなファンタジーが広がる。8Xでパーシングは未体験ゾーンの異次元移動体に昇華したようだ。


(文:山崎憲治)


PERSHING 8X
全長 25.55m
全幅 5.86m
喫水 1.40m
重量 57.00 ton
エンジン 2×MTU 16V 2000 M96L
最高出力 2×2,638 hp
燃料タンク 6,200L
清水タンク 1,300L
問い合わせ先 リュウカンパニ― Tel :0467-38-8612
http://lyucompany.jp

文:山崎憲治

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