野心あふれる革新的なブリティッシュカー!│高級サルーン ローバー 3500に注目

Photography: Yukio YOSHIMI

英国の自動車産業が華々しかった最後の時代に企画され、その凋落とともに歩んだというべき高級車がローバー2000(後に2200)と同3500であった。あわせて“P6”と呼ばれている。1963年に登場し、1970年にはシリーズⅡへと進化、77年まで総計30万台以上が生産された高級サルーンシリーズだ。

60年代前半といえばまだまだ英国ブランドたちの競争心は強く、自国マーケットのみならず大陸市場や北米市場も意識したコンペティティブな開発競争が行なわれていた。経済発展に伴って人々の生活が向上すると小型モデルでは飽き足らなくなった人々が頃合いの高級車を求め始めたのだ。そんな人たちのために、大型高級サルーンより求めやすい上級セダンのP6をローバーは提案。この頃のローバー社にはまだまだ技術的・経済的な余力があり、前後フードはアルミ製で、豪華なディテールパーツが各所に奢られ、ガスタービンエンジンの搭載を真剣に考えた足回りを設計するなど、P6には野心あふれる技術的チャレンジがたくさん散りばめられていた。1964年には、この年始まったばかりのヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤーに2000が輝いているという歴史もある。



ガスタービン搭載は断念されたが、代わりにローバーはGMビュイック開発の先進的なアルミ製小型V8エンジンの製造権利を買い取り、1968年にはP6に搭載(3500)するなどして注目を集めた。このV8エンジンは後に多くのローバー車、レンジローバー車に積まれることとなった。

シンプルながらユニークな3ボックススタイルが実現され、複雑な足回りが生み出すストロークたっぷりの走りもまたP6の魅力だ。日本では特にモーターメディアの父ともいうべき故小林彰太郎氏が好んで乗っていた(2000TC)ため、ローバーP6という名前は多くの車好きの心に刻まれているだろう。

日本国内ではあまり見かけることがないが、コレクタブルカーの個人間売買サービス「CARZY」にて現在売りに出されているローバー 3500がある。1975年当時の正規輸入元であった新東洋モータースによって輸入されたもので、その後4人のオーナーを経て現在では走行距離も16万キロを越えるほど元気に現役生活を続けている。



魅力はなんといってもこの内外装カラーコーディネーションではないだろうか。アーモンドというボディカラーにチョコレートのヴァイナルトップという組み合わせはカタログカラーで、まるでカスタードプリンのよう。インテリアもまた濃淡ブラウンでまとめられており、とてもお洒落な雰囲気だ。



現オーナーはそもそもローバー75に乗っていたこと、父はアメリカンV8を好んで乗っていたこともあり、知り合いが所有していたこのローバーP6 3500を譲り受けることに。2007年に譲り受けたのち、12年間で5万キロほど走行。右ハンドルの3段オートマチック車ということもあり、女性でも気軽にドライブできるため、夫婦で1泊2日のラリーイベントに出場するなど大いに楽しんできた。エンジンまわりは一通り手がかけられており、現在でも快調に走る。



軽くドライブしてみれば、そのフラットでたっぷりとした乗り心地に感動。見た目にもそして乗った感じにも嫌なところがなく、このままドライブにでかけろと言われても不安なく出発できそう。よく整備し乗られてきた個体に特有の安心感がある。軽く閉まるドアにも感激!75年製というのでもっとひどい造りを想像していたが、この一台はとてもしっかりとしている。

もちろん16万キロ以上走っているうえ、ごく普通に乗られてきた車でもある。トップは張り替えられており、ボディ両サイドも補修ペイントされている。またボディの小キズや汚れ、内装の色あせやへたりなど、経年劣化というべきマイナスポイントも散見されるが、それも併せてのクラシックモデルというべきであろう。インテリアはすべてオリジナル。ジャージー生地のシート(カバーしっかり保護されています)がまた良い雰囲気を出している。

このたび別のクラシックカーのフルレストアが完了し、その資金捻出もあって泣く泣く大事にしてきたP6を手放す決意をしたのだ。


車両情報提供:CARZY(文:西川 淳   写真:吉見 幸夫)

オクタン日本版編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事