隠れた狙い目?│ピニンファリーナが手がけた個性的なミドシップ・スポーツカー

Photography: Junichi OKUMURA

1970年代半ばから80年代始めに至るまで、ピニンファリーナで生産されたランチアのミドシップスポーツカーがモンテカルロ(アメリカ名スコーピオ)であった。

モンテカルロが登場するにあたり、当初、ピニンファリーナは"124スパイダーの後継となるスポーツカーを開発すること"をフィアットから依頼されていた。開発コードはX1/8で、3リッターのV6エンジンを搭載。ピニンファリーナにとって、初めてのオリジナル設計モデルであった。

しかし、フィアット X1/9を同時期にベルトーネが企画しており、フィアットはよりリーズナブルな車格のベルトーネ案を採用したのであった。引き続き、ピニンファリーナはX1/8を開発したが、後にエンジンをV6からランプレディ4気筒へと変更したX1/20へプロジェクト名を変更する。さらに当時、ランチアはフラッグシップモデルを欲していたため、X1/20プロジェクトを引き取り、1975年にランチア“ベータ”モンテカルロを登場させたのだ。



ランチア・ベータはこの頃のランチアが注力していたモデルでFFのセダン&クーペであったが、共通項のないピニンファリーナ製ミドシップカーに同じ名を与えたのは、マーケティング的な意味合いの強いものだった。

このような背景があり、1978年まで生産されたシリーズ1とされるモデルはベータ・モンテカルロと呼ばれている。1979年には一時生産を休止。1980〜81年のシリーズ2では、ベータではなく、"モンテカルロ"とネーミングされた。シリーズ1、2ともにタルガトップスタイルのスパイダーも設定され、合計の生産台数は7500台強だといわれている。



そして、日本国内で販売されているこの一台は、1980年に生産されたシリーズ2、つまりランチア・モンテカルロのクーペである。イタリアでのレジスターのほか、ドイツ語で記された細かなテクニカルスペック表も保持している。

前オーナーが徹底的に手をかけた個体というだけあり、この年代のイタリア車としては珍しく、美しいコンディションを保っている。ボディはオリジナルカラーでリペイントされている。中でも、インテリアトリムは完全オリジナルのままで、布地のたるみやシワも見られるが、良いコンディションだといえるだろう。



エンジンも一発で始動。決して速くはないが、小気味のいいハンドリングを思い切り踏んで楽しめる感覚は、この時代のミドシップカーならではといえる。速い車には疲れたという人にも最適な選択肢だろう。


車両情報提供:CARZY (文:西川淳 写真:奥村純一)

文:西川淳 写真:奥村 純一

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