ベントレーらしい走りの良さに魅了される│新旧フライングスパーとミュルザンヌに試乗

Photography:Gensho HAGA

ベントレー新型フライングスパーのデリバリーがまもなく開始される。その魅力を、ベントレーの歴史に詳しいワクイ・ミュージアム館長 涌井清春氏と、いち早くモナコで試乗したモータージャーナリスト 大谷達也氏に語っていただいた。そして、伝統の1963年フライングスパーと、間もなく生産終了となるミュルザンヌにも同時試乗を行った。

時代の重みをたたえた建物を前にして、3台のベントレーが佇んでいた。1台は1963年 フライングスパーS3、もう1台は最新のフライングスパー、残る1台は間もなく生産終了となるフラッグシップモデル、ミュルザンヌである。
 
およそ60年のときを隔てて作り上げられた2台のフライングスパー。このうちS3を所有するのはワクイ・ミュージアム館長の涌井清春氏である。

「私は(フライングスパーS3の源流にあたる)S2のコンチネンタルが出た時、こんなに格好いいクルマが世の中にあるのかと驚きました」涌井氏が語り始めた。

「これがきっかけでベントレーの世界にのめり込んで、その先祖にあたるRタイプ・コンチネンタルも含めて数年ずつ乗りましたが、長い間乗っていると、だんだん4ドアのフライングスパーのほうが魅力的に思えるようになってくる。なにしろ、4ドアの使いやすさを備えているのに、軽快でエンジンが力強い。これぞW.O.ベントレーが手がけたモデルの再来ではないかと思ったほどです」
 
いうまでもなく、コンチネンタルは2ドア・クーペのグランドツアラー。しかし、裕福なベントレーの顧客はコンチネンタルのパフォーマンスを損なうことなく、これを4ドアに改めたモデルの誕生を願った。こうして生まれたのがかつてのフライングスパーだった。



「現代風にいえば4ドア・クーペです」と涌井氏。「だから(往年の)フライングスパーはリアドアが短い。ドアの長さが本来の2/3くらいなんですね。それをドライバーズカーとして愛用したわけです」
 
涌井氏の話を聞いて、現代のコンチネンタルGTとフライングスパーの関係にそっくりではないかと思った。2ドア・クーペのコンチネンタルGTに対して、フライングスパーは4ドア・サルーン。もっとも、先ごろ3代目に生まれ変わった新型フライングスパーはリアウィンドウが強く傾斜していて、まるで4ドア・クーペのように見える。現代のフライングスパーはショーファードリブンとしても使えるが、ひとたびそのステアリングを握れば、再びショーファーに運転を委ねるのが惜しくなるほどドライバーズカーとして優れた資質を秘めている。

文:大谷達也 写真:芳賀元昌 Words:Tatsuya OTANI Photography:Gensho HAGA 撮影協力:赤坂プリンス クラシックハウス Thanks to:The Classic House at Akasaka Prince

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