ベントレーらしい走りの良さに魅了される│新旧フライングスパーとミュルザンヌに試乗

Photography:Gensho HAGA


 
私は今回、ワクイ・ミュージアムが管理している貴重なフライングスパーS3に短時間ながら試乗させていただいたが、アルミ製の軽量なボディとパワフルなエンジンの組み合わせにより機敏な走りを実現している点は、まさに現代のフライングスパーとうりふたつ。細身の大径ステアリングを操る繊細さが味わえるフライングスパーS3に対し、よりソリッドでスタビリティの高いハンドリングが魅力的な最新フライングスパーという違いは認められたものの、レザーがふんだんに使われた2台のインテリアからはどちらも同じ気品の高さとなんともいえないあたたかみが感じられた。



「そうですね、この温もりはベントレーならではの味わいです」 涌井氏も私の意見に同意してくれた。
 
いっぽうのミュルザンヌとフライングスパーS3にも、意外な共通点が存在することをご存じだろうか? ミュルザンヌに搭載されるV8エンジンの系譜を遡ると、1959年にデビューしたコンチネンタルS2に辿り着く。もちろん、その後の60余年でほぼすべてのパーツが刷新され、排気量も6230ccから6747ccへと拡大されたが、総アルミニウム製の90度V8という基本骨格はそのままに、細かな改良を積み重ねていくことで長い歳月を生き続けてきた。こうした進化の過程は、古いものを大切にしつつも、未来を先取りするという気風に富んだイギリス人らしい考え方を反映したものといえるだろう。


60年近い歴史に終止符を打つ、伝統のV8エンジン。可変バルブタイミングシステムや気筒休止システムも備わる。最高速度は305km/h。

 
ミュルザンヌの走りはまさに荘厳そのもの。その落ち着き払った身のこなしには、ベントレーの伝統がそのまま宿っているといっても過言ではない。現行ベントレーのどのモデルよりもレザーとウッドをふんだんに用い、職人たちが手間ひま惜しまず仕上げたインテリアからも時を超えた魅力が伝わってくるはずだ。
 


このV8エンジンも、間もなく現行型ミュルザンヌとともにその歴史に幕を下ろそうとしている。その次期型は電動化されるというのがもっぱらの噂だが、こうした先進性もまたベントレーらしいといえる。



ベントレー フライングスパー
ボディサイズ:5325x1990x1490mm ホイールベース:3195mm
車重:2540kg 駆動方式:4WD 変速機:8段AT
エンジン:W12ツインターボチャージドTSI 排気量:5950cc
最高出力:635ps/ 467kW 最大トルク:900Nm
車両価格:2667万4000円

ベントレー ミュルザンヌ・スピード
ボディサイズ:5575x1925x1530mm ホイールベース:3270mm
車重:2770kg 駆動方式:後輪駆動 変速機:8段AT
エンジン:V8 OHVツインターボ 排気量:6752cc 最高出力:537ps/395kW
最大トルク:1100Nm  車両価格:4022万1000円

文:大谷達也 写真:芳賀元昌 Words:Tatsuya OTANI Photography:Gensho HAGA 撮影協力:赤坂プリンス クラシックハウス Thanks to:The Classic House at Akasaka Prince

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