野心に溢れていた ?! │ジェンセン・インターセプター復活計画!

Photography: Matthew Howell

ジェンセン・インターセプターの復活計画をご紹介。1976年にジェンセン・モーターズは終焉を迎えたが、インターセプターは違った。正確にいえば休止に入ったというところか。管財人によって主工場は貸し出されたのち、最終的には売却の憂き目にあった。だが、ジェンセン・パーツ&サービス社、のちのJPSエンジニアリング社は隣接した建物に移って存続し、ビジネスとしても成功を収めた。インターセプターの修理や修復のほかにも、ウィリアム・タウンズ(元アストン・マーティンのデザイナー)作の小型車ハスラーの製造や、北アイルランド警察用にランドローバーを装甲車に改造するなど、様々なプロジェクトを担った。
 
さらに、イギリスでのスバルのディーラーシップを取得して、会社は活況を極める。懐が潤ったことで、当時オーナーだったイアン・オーフォードは、長く温めてきた構想を実行に移すため、再び自宅を抵当に入れ、資金を調達すると、新たに生まれ変わらせたインターセプターを1983年ロンドン・モーターフェアで発表した。認可取得を省くため1972年のオリジナルを元に製造され、インターセプターS4として本格的な生産が始まる。
 
ビッグブロックV8は消え、代わりに5.9リッターのクライスラーエンジンを採用。トゥーリングがデザインした外観はほぼ以前のままだった。だが、価格は3万9950ポンドにも達し、値段ばかりが取り沙汰されたのは不幸なことだった。果たして売れ行きは散々で、ジェンセン・カー・カンパニーは1989年にヒュー・ウェインライトのユニコーン・ホールディングスに売却された。その頃には、S4の価格は10万6000ポンド、コンバーティブルは11万8000ポンドにも高騰していた。新経営陣は、プレスから塗装、内装までの真新しい生産ラインを組立て、販売活動にも力を入れ、起死回生を図った。目標生産台数を年間12台に、売上を120万ポンドから400万ポンドに上げることだった。ロンドンはベイカー街の有名なディーラー、ウエスト・ワンが指揮を執った。


 
野心的な計画を立てても、それが成功するとは限らない。1993年までに生産されたS4はたったの15台で、この年、ついにインターセプターの歴史が完全に幕を閉じた。その後、シボレーV8エンジンを搭載した新しい"シリーズ5"GTが企画されたが、発表されることはなかった。これに奮闘したのはジョン・マンゴレジだ。彼はグループCレースで、短命ではあったがBRMの名前を復活させたことがあった。またサウジ資本が、アリエル・アトムのサイモン・ソーンダースがデザインに当たっての復活が企画されたが、模型の段階以上には進まなかった。さらに1998年には、まったく異なる体制の元でジェンセンS-V8が発売されたものの、失敗に終わった。
 
近年になっても、インターセプター復活の試みはいくつもある。権威あるジェンセンのスペシャリスト、クロプレディ・ブリッジ・ガレージの協力で、2008年にVエイト社がシボレーLS2エンジン搭載のインターセプターSを発売。またVエイトは、インターセプターを大きくカスタマイズしたSXも完成予想図を発表したが、実現はしなかった。2010年にも、ジェンセン・インターナショナル・オートモティヴが独自に開発したインターセプターSを発売した。6.2リッターのシボレー"LSA"V8エンジン搭載、6段ATと特注の後輪独立懸架式を採用。その後、スーパーチャージャーなど多様なアップグレードも提供し始めている。
 
ホットロッドを手掛けるバレーガス・スピードショップも、独自のモデルを提供している。ある顧客のために8.3リッターのバイパーV10エンジンを搭載したインターセプターをシーグレーブの名で製作。その後、広く提供し始めた。シルエットに手を加えた点については、好みが分かれるところだろう。
 
最後に、まったく新しい"レトロ"インターセプターを紹介しよう。まだ企画段階だが、プロトタイプの技術で設計の世界では有名なCPPグローバル・ホールディングスが、インターセプターの新しい後継車を作る計画を2012年に明らかにした。総アルミ製シャシーで、HSCS(ヒーレー・スポーツカー・スイス)から名前を使用する権利も得ており、コベントリーにある元ジャガーのプラントで製造するという。だが今のところ、新しいインターセプターはコンピュータグラフィック上だけの存在だ。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation: Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words: Richard Heseltine Photography: Matthew Howell ,adam duckworth

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