超弩級高性能ロードカー!7台だけ存在したフォードGT40の「ロードゴーイングバージョン」

Photography:Paul Harmer



「バラバラにしてみて、たいへん驚きました。ロードカーとはいえ、レーシングカーとして組立てられたものをベースに公道走行用に必要最小限度の変更を加えていただけでした。一番わかりやすいのが、アメリカの法規に合致するようにヘッドランプの取り付け位置を高くしているところです」
 
「しかし、軽量であることを重視するレーシングカーだったため、組み立てはかなりずさんでしたね。アンダーシールはところ構わず塗りたくられ、スプレーも周囲に飛び散っていましたよ。フェラーリやマセラティよりも高かったのだけれど……」と笑う。
 
少量ながらシリーズ生産したレーシングカーであったため、GT40のすべての部品は日付が刻印されている。ボラーニホイール、ブレーキキャリパー、そしてサスペンションのキャスティングパーツには1966年と1967年の刻印が認められた。刻印が見つかったブレーキサーボは交換するのではなく、オリジナルを重視してリビルドした。同様にオリジナルのウィンドーウォッシャー・ボトルもリビルドした。オリジナルを重視する姿勢は徹底したもので、"わざと"ラジエターのエクスパンションタンクは新造を余儀なくされたが、オリジナルと同じくらい酷い繋ぎ目の加工を施したほどだ。2個のケンロー製電動冷却ファンはオリジナルだ。エンジンブロックをフォードブルーに塗りなおす際にも、細心の注意を払った。コニ製ダンパーもリビルドしたが、元のオレンジ色塗装のままでなんら問題なかったため、あえて塗り直すことはしなかった。


 
拡大されていたホイールアーチなどボディも改造されていたが、オリジナルのシルエットに戻したのはいうまでもない。ボディはホワイトに塗り直されていたが、オリジナルの風変わりな"アマランサス色" の塗装は端々に残っていたので、これを参考に調色して再塗装した。ベアリング、シール、ホース、ブレーキの油圧、バルブスプリング、ピストンリングなどの消耗品は交換したが、その際に判明したのは、"1103" はそれらが新車から無交換だったことだ。なるほど、コンコルソ・ヴィラ・デステで「最も繊細なレストア」という賞を受けたのも頷ける。こうした入念な作業の末、偉大なアングロアメリカン・レーシングカーのロードゴーイングバージョンが復活した。

オクタン日本版編集部

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