超弩級高性能ロードカー!7台だけ存在したフォードGT40の「ロードゴーイングバージョン」

Photography:Paul Harmer

フォードGT40は1960年代を代表する最高のレーシングスポーツカーと断言しても、誰からも異論は出ないだろう。なにしろル・マンで4回も優勝しているのだ。そのGT40には、たった7台だけ、公道走行用のいわゆる"ロードゴーイングバージョン"が生産された。ル・マン・ウィニングカーの血統が色濃い超弩級高性能ロードカーは、スポーツカーエンスージアストにとっては垂涎の1台だろう。

フォードGTのバリエーションには、大別してMk.I、Mk.Ⅱ、Mk.Ⅲ、そしてMk.Ⅳの4種がある。総計で102台が生産されたことになっているが、アップデートによりコンバートされたクルマも存在するから、正確なところはわからない。今回の主人公は、GT40のストーリーの中ではあまり語られることのない、ロードゴーイングバージョンのMk.Ⅲで、シャシーナンバーM3/1101から1107の7台がフォードで造られた。
 
今回、紹介する1968年Mk.Ⅲシャシーナンバー"M3/1103"は、新車当時、標準型GT40を2000ドル上回る1万8500ドルの価格で販売されたという高価なロードカーであった。"1103" の現在のコンディションは素晴らしく、2012年のコンコルソ・ヴィラ・デステや、2012年のウィンザー城コンクールデレガンスにも出品されている。また、インテーナショナル・ヒストリック・モーター・アウォードでは、"レストレーション・オブ・ザ・イヤー" の候補にも推薦されるほど、興味深い歴史を持つ特別な1台である。

超弩級高性能ロードカー!7台だけ存在したフォードGT40の「ロードゴーイングバージョン」(写真6点)
 
現在、"1103"を所有するガリー・バレットは大の英国車贔屓で、素晴らしいジャガーのコレクションで知られ、Cタイプ、Dタイプ、そしてなんとXK-SSを2台も所有している。XK-SSは、ル・マンで大成功したDタイプのロードゴーイングバージョンである。そう、XK-SSを2台も所有していることから推察できるように、バレットはコンペティションカーのロードゴーイングバージョンに目がないのだ。


 
「XK-SSは溺愛しています。ですから、GT40のロードゴーイングバージョンがあると聞いて、どうしても入手したいと思ったのです。"1103"は、元デイリー・エクスプレス紙のオーナーだったサー・マックス・エイトケンが購入したクルマでした。ナイトの称号を持つサー・マックスは、第二次世界大戦のファイターパイロットでありパワーボードレーサーという経歴を持つスポーツマンです。その後、1973年にブライアン・オーガーの手に渡ったのです。彼はトリニティーというバンドのメンバーでしたが、ノーフォークでジャガイモを栽培する農家も営んでいました。オーガーは1981年に売却し、新しい所有者がロード・モンタギューのナショナル・モーター・ミュージアム(ビューリー)に貸与して、展示していました」
 
「詳細に調べてみたところ、改造された外見を除けばオリジナルのままで、走行距離はたった6000マイル(約9600㎞)でした」GT40 Mk.Ⅲを手に入れたバレットは、自身のジャガーを任せているジャガーレーシング社と、エンジニアリングで名声高いCKLディベロップメンツにレストアを依頼した。可能な限りオリジナルのパーツを用いて、"1103" を元のスペックと姿に近づけるプロジェクトを実行した。
 
1973年にブライアン・アーガーの元にあったとき、Mk.I風の外観に改造され、ペイントもGT40の定番であるホワイトのボディにブルーのストライプというアメリカンカラーに化粧直しされ、これまた定番のハリブランド製アロイホイールにレーシングタイヤを組み込んでいた。だが、幸いなことに、インテリアとメカニカルな仕様はオリジナルが保たれており、わずかにレース用の排気孔が開けられていた程度だった。幸運にも、外されたオリジナル・パーツは乾燥した倉庫に保管されていたので損傷は見られなかった。その中には、肝心のボラーニ製ワイヤースポークホイール、ラゲッジボックス、バンパー、排気口と、明らかにハンドメイドのストリート用テールパイプが含まれていた。 

オクタン日本版編集部

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