「101年目のシトロエン試乗記 その1」 ベルランゴは現代の2CVかもしれない



素晴らしいエンジンと8段ATの組み合わせ


期待以上だったのは走りだ。まず1.5リッターのディーゼルターボエンジンがいい。ディーゼルの音はするが最新設計らしく回り方が軽い。極低回転域でトルクの薄さを露呈することはあるものの4000回転まで十分なパワーがあり、中間加速でのトルクのツキも良い。さすがに4000回転から上は回っているだけの印象が強まる。しかし8段ATの恩恵で日常使用の範囲であればその回転域は使わないで済む。



アイシンの最新8段ATはとにかく素晴らしい。変速スピードが早く、踏み込んで加速するときはカングーのDCTなどよりスムーズでダイレクトだ。フランス車らしいのは速度域ごとにギアが固定される特性があるので、2速あたりだと意外と変速せずに引っ張ることだ。同じ系統のアイシン8段ATを搭載する三菱デリカD:5やエクリプスクロスにも同じ傾向があって、フランス車みたいだと感じたことを思い出した。マニュアル車のようにアクセルだけで加減速できるので筆者は実に使いやすいと思うが、ルーズなCVTに慣れた人には少しだけ違和感があるかもしれない。

とはいえこの最新ATのおかげで、ベルランゴは上質で洗練された走りを獲得した。国産車やドイツ車ユーザーにアピールするのは間違いないだろう。

シトロエンらしい乗り心地は健在


足回りに懐の深さを感じるのはフランス車、特にシトロエンやルノーの常であるが、ベルランゴも商用車派生モデルとは思えないほどロードホールディング性が高い。低中速域で目地段差を超えた時のハシューネスこそ多少あるものの、街中での全体的な乗り心地は良好だ。

高速道路ではさらに印象がよくなる。往年のハイドロニューマチックモデルほどではないが、シトロエンらしい揺れの収め方をベルランゴでも味わうことができる。カングーも高速道路での脚のさばき方には定評があるが、比べるとカングーの方が揺れの減衰スピードがリニアだ。ベルランゴのほうがワンテンポ戻しのスピードが遅く、作為的な印象を受けるあたりがシトロエンぽい。そういえばブレーキング時のノーズダイブはあまり感じないのに、加速時に結構お尻が下がるのもハイドロシトロエンぽいと思った。



コーナリングでは特に切り始めのスムーズなハナの入りと穏やかなロールが印象的だった。最近のスバルやトヨタの新世代シャシーはこのあたりの出来がいいのだが、ベルランゴも負けていない。欲をいえば高速でのステアリングセンターのすわりはもう少しだけ良くしてほしい。タイヤはミシュランのエナジーセイバーだったが、空気圧を少しだけ下げたくなった。

ちなみに1人よりも2人、2人よりも3人乗った時の方が、車の挙動も乗り心地も良かった。このあたりは同じく「貨客両方車」の流れを汲むカングーとも共通している。


先進安全装備もしっかり付いている


最新モデルらしくいわゆる自動(衝突被害軽減)ブレーキなどの先進安全装備もベルランゴは充実している。ACCも停止時まで対応するし、レーンキープアシスト、さらにはパーキングアシストも標準だ。相変わらずACCのレバーが奥にあって操作方法を覚えるまでは不便なのが唯一の不満だ。

文・写真:馬弓良輔 Words & Photography: Yoshisuke MAYUMI

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