見た目が「奇妙」ということで注目された1930年代に登場したエアフロー

RM Sotheby's

「時代の先をゆく」といううたい文句がついたら要注意。こういう言葉を使うのは、たいてい天邪鬼か変人で、この言葉で擁護するのは、カルト宗教や訳の分からない前衛芸術、シンクレアC5のたぐいだ。
 
だが、このクライスラー・エアフローを形容するのにこれ以上ぴったりの言葉はない。その革命的な流線型のフォルムは、1934年の発売当時、「アメリカ人から心底毛嫌いされた」と『Time』誌に書かれたほどだった。しかし最終的には、抵抗するアメリカを理にかなった自動車デザインの世界へと引きずり込む役割を果たしたのである。
 
エアフローを開発したのは、エンジニアのカール・ブリア、オーウェン・スケルトン、フレッド・ゼダーで、動力飛行機の発明で名高いオーヴィル・ライトの手も借りた。その革新性には、ウォルター・クライスラーも「個人の移動にまったく新しい流行をもたらす」と誰彼かまわず語って聞かせたという。その自信も、もっともだ。
 
フラットヘッドの直列8気筒エンジンと風洞テストを経て誕生したボディワークで、箱形のライバルには対抗できないパフォーマンスと燃費を誇ったのである。セミモノコックの採用で見事な強度も実現。さらに、エンジンと乗員の搭載位置を前方にすることで、重量配分が最適化され、乗り心地とハンドリングも絶妙だった。
 
だが世の常として、こうした点は一般大衆から無視され、代わりに見た目が"奇妙"だということばかりが注目された。エアフローの売上は、1934~1937年で3万台にとどまったのである。
 
写真の1台は、グリルが1935年モデルのものだ。発売当時は滝のように流れ落ちるデザインだったが、その後、保守的な消費者の嗜好に合わせて少し従来型に戻った。しかし、このCXカスタム・インペリアルは1934年製造である。フレーム状態まで戻して完全なレストアが施されたコンクール・コンディションだ。

450台からなるジョン・スコッティ・コレクションの1台で、2014年にオーバーンで開催されたオークションに出品された。落札された車の中で最も高額な21万3400ドルを記録したのだ。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA

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