「101年目のシトロエン試乗記 その2」 C5エアクロスSUV シトロエンによる新しいコンフォートの定義

Photography:Yoshisuke MAYUMI



日常領域の柔らかさをシンプルな機構で実現したPHC
提供:グループPSAジャパン

さて、前置きが長くなったが、ようやく本題の足回りの話に移ろう。PHCはWRCからフィードバックされた技術であり、ショックアブソーバーとバンプラバーの2つの機能を併せ持っている。ダンパーの中にもうひとつ位置依存型ダンパーを入れることで、大きな入力があったとき最大ストローク域での減衰力をプログレシッブにアップできるのがポイントだ。ラリーの場合はこれをサスペンションストローク増大やフルボトム時の急激な挙動変化を避けるために活用しているが、PHCはそのプログレシッブな減衰力を日常領域での乗り心地の柔らかさに割り振っている。

ハイドロニューマチックの場合は、ダイヤフラムで仕切られたスフィアの上部を占める窒素ガスがプログレシッブレートのエアバネとなることで柔らかさを確保し、スフィア下部のオリフィスとダンパーバルブを出入りする作動油で一定の減衰力を発生させている。XM以降で採用されたハイドラクティブは両輪間に追加されたスフィアの断続で2種類のバネレートとダンピングレートを獲得しているが、基本的な特性は変わらない。

PHCが減衰力、ハイドロがバネレートと異なるものの、プログレシッブな特性を日常領域のコンフォート性能に活かしているのはどちらも同じだ。そしてPHCの魅力は何と言ってもダンパーの中だけでメカニズムが完結する機構のシンプルさだろう。


市街地ではハイドロニューマチックも同然


そんなPHCを採用したC5エアクロスSUVの走りは40〜70km/h程度の領域での印象が素晴らしく良かった。この速度域ではハイドロニューマチックにとても似た揺れの収束感を披露する。これまでの非ハイドロシトロエン車の中でもっともハイドロに近いといってもいいだろう。ハイドロニューマチックとしては比較的締まった乗り心地のエグザンティアやC5の4気筒モデルあたりと似た脚さばきだ。

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