公道を走るF1マシンか否か ?! │650馬力を発揮するフェラーリ エンツォに試乗し気付いたこと

Photography: Paul Harmer

フェラーリ創業者の名前を冠したエンツォは、シューマッハー時代のF1のテクノロジーを特別な顧客に販売するという試みであった。

先進的な複合素材を使用し、ダッシュボードやステアリングホイールに至るまでカーボンファイバー製で、最先端のセミオートマチック6段ギアボックスと大きなパドルシフトを採用。アクティブエアロダイナミクスで発生するトータルダウンフォースは、200㎞/hで343㎏、300㎞/hで774㎏、それ以上の速度ではドラッグを減らすため584㎏に下がり、最高速度は350㎞/hを実現すると謳われていた。

エンツォが走ればどこでも人の目を奪い、驚かせることは容易だ。ボディのシルエットが気に入らないという人も少なくはなかったが、その存在感に匹敵できるマシンは、まず存在しなかった。エンジンはいかにもV12らしいサウンドを奏でるし、650bhpは当時ほとんどのライバルを凌いだ。それを小さな径のカーボン製ブレーキがものの見事に止めた。

だが、左ハンドルでもあり、イギリスの普通の幹線道路を走るには車幅が広過ぎる。対向車線にトラックが見えてくると、私はいつも路肩が心配になった。それに"視界" と呼べるものは肩越しにも助手席側にも一切ない。そのため時にぶざまな事態に陥る。道路の合流地点では、一旦停車し、シートベルトを外して車外に出るとルーフ越しに後方を確認し、すぐさま飛び乗って誰も来ないうちに急いで発進するのだ。これは本当のことである。

だが、ドライブするだけという意味において、運転は実に楽なものであった。もっともそのパフォーマンスを思い切り堪能したいとなれば、相当のスペースが必要になるのだ。英国の人気テレビ番組『トップギア』ではエンツォがトップにランキングされていたが、最近、実際にあの番組が使うテストコースを運転してみて、その理由がよく分かった。比較的長いストレートがあり、それをつなぐ非常にタイトなコーナーは路面に引いたラインで示されているだけ。ストレートはパワー勝負、残りはブレーキで決まる。ラインを外しても何の問題もない。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation: Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation: Megumi KINOSHITA Words: Mark Hales

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