学ぶことが永遠に尽きないクラシックカー│特別な一台との出会い

Photography:Thomas Macabelli

これは、高名なイタリアのコレクター、コラード・ロプレストが所有する11台のアルファロメオ・ジュリエッタの話である。1台残らずすべて歴史的価値の高い貴重なコレクションについて、マッシモ・デルボが話を聞いた。今回はジュリエッタ・スプリント・ルッソをご紹介。

1956年 ジュリエッタ・スプリント・ルッソ (エラボラツィオーネ・スペチアーレ・ベルトーネ)
ジュリエッタのベルリーナは発売と同時に大ヒットとなり、社内製造分には順番待ちの長いリストができた。すると様々なカロッツェリアがベルリーナに手を加え始め、構造部以外のディテールを変更して自分たちのスタイリングを広く世にアピールし、売り上げを伸ばしていった。また、優先的な供給経路があったおかげで、ディーラーが扱う標準仕様に先んじて、高価なモディファイバージョンを納車していった。

 
カロッツェリア・ベルトーネでも、クーペのスプリントをベースにした少数のシリーズを1956年から造り始めた。独自の仕様には、レザーのインテリア、サイドの三角窓、白色のウィンドウ・シール、ベルトーネ・スポーツのステアリング(リムはウッドかプラスチック製)、ホイールのクローム製リングトリムなどがあり、インテリアも様々にカスタマイズできた。
 
このシリーズに正式名称はなく、エラボラツィオーネ・スペチアーレと表現されていた。製造数は知る由もない。分かっているのは、1956年にトリノで発表されたことだ。ベルトーネのスタンドには、スプリント・カブリオレと、ルビンレッドのクーペ(標準の2+2ではなく本格的な4シート)、そして、レザーインテリアとフォグライトと専用ラゲッジケースを備える白い車の3台が展示された。
 


このミニシリーズで現存が知られているのは、写真のフレンチブルーのルッソのみである。タイプ750Bがベースで、新車で納車されて以来ずっとパリにあったが、2011年にパドバのクラシックカー・ショーでロプレストが目にして購入した。「クラシックカーは美しい。それは、学ぶことが永遠に尽きないからです。私が見かけたとき、このジュリエッタはひどい状態で、いろいろなシリーズのコンポーネントを使い、塗装もお粗末でしたよ。しかし、ふとサイドの三角窓が目に入りました。メッセージが脳に届くまでに数秒かかりましたね。引き返すと、レザーのインテリアがオリジナルであることに気づいて、当時の仕事に違いないと私には分かりました。それが購入した理由です。あとでベルトーネとアルファロメオのアーカイブを調べたら、特別なものを発見したのだという証拠が本当に見つかりました」

「レストアは難しかったですね。何がオリジナルで、何がそうでないのか。私たちは、他の2色の下に最初の塗装を見つけ、オリジナルであるコノリー社のクラッシュド・グレインのヴォーモルレザーも救うことができました。複製が最も困難で高くついたパーツは、白いウィンドウ・シールで、今では標準の黒しか手に入りません。白色を製造するために、メーカーはまず機械を清掃し、新たに造ったあとで、また黒に戻さなければならなかったのです。1mあたりいくら支払ったのか、思い出したくもないです。とはいえ、白色のシールはこのスペシャルシリーズのトレードマークですからね」

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo. ) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Massimo Delbò Photography:Thomas Macabelli Thanks to:Swiss Museum of Transport Lucerne, www.verkehrshaus.ch, Serenella Ar

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