2種のブリティッシュ・スポーツカーの逸品│同じエンジンを持った2台に対面

Photography:Jordana Schramm

同じエンジンを使った2種のブリティッシュ・スポーツカーの逸品、ACとフレイザー・ナッシュを所有するドイツ人オーナーの元をロバート・コウチャーが訪ねた。

分別。控え目。こういった言葉自体は、なりふり構わず大声で自分をアピールしないと生き残ることが難しい現代のブランド間の戦いにおいては、往々にして見失われてしまうものだ。
 
今回、私たちが取材した2台のクラシックスポーツカーは、オープンスポーツとクローズドボディが各1台だ。見たところ、1950年代の英国車であることは誰にでも想像できるだろう。
 
白いオープンは兄弟車のコブラが有名だから、おわかりだろう。そのオリジナルとなった1958 年型AC エースだ。463台生産されたうちの1台で、もちろんまだV8エンジンではない。いっぽうのクーペの方を言い当てるのはむずかしいかもしれない。これは、レース用としてたった9台が造られたにすぎないモデルだからだ。ル・マンをターゲットとしたこの車は1953年に登場し、フレイザー・ナッシュ・ル・マン・クーペと命名された。AC、フレイザー・ナッシュともに、ボンネットの下にはBMW M328エンジンをベースとした、ブリストル製の2ℓストレート・シックスが控えている。すなわち、これらのスポーティング・クラシックは、英国車のベストであるとともにドイツ車のベストでもあるわけだ。


 
航空機メーカーだったブリストルは、戦後に自動車産業への進出を試み、既存の自動車メーカーの買収をその手段とし分た。白羽の矢が立ったのは、BMWの英国総代理店でフレイザー・ナッシュBMWとして328などを販売していたAFNフレイザー・ナッシュ社だった。同社のためにブリストルがエンジンのライセンス生産を受け持っていた。
 
これらの写真が英国のグリーンの土地ではなく、ずっと東方、ドイツはザクセン州の田舎で撮られたことに興味を覚えるかもしれない。取材のため私たちは、1989年11月9日まではドイツ民主共和国(東ドイツ)だった「ザクセンの宝石箱」として知られるドレスデン市にいた。ドイツとチェコの国境に近くのエルベ川沿いに位置するドレスデンは、第二次大戦中には連合軍の爆撃によりほぼ壊滅状態となったが、1990年ごろから始まった修復が最近完成したばかりで、美しい町並みを取り戻していた。

ACとフレイザー・ナッシュはクリスマスマーケットで有名なノイマルクト広場にパークしている。広場の反対側には11年をかけて2005年に再建成った聖母教会が臨まれる。尖塔の頂上に置かれた巨大な金の十字架は、ロンドン出身の英国人金細工職人アラン・スミスによって制作され、2000年2月にケント公によって正式に贈与されたものだ。

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers )  Transcreation:Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers ) Words:Robert Coucher Photography:Jordana Schramm 取材協力:A.ランゲ&ゾーネ(www.alange-soehne.com )

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