ル・マンに挑むため設計された特別な車│航空力学的なボディの美しさと性能

Photography:Jordana Schramm


 
航空力学的なボディには、華美な装飾のない正しいメタリックシルバー仕上げが施されている。フロントのツイン・スポットライト、クイックレリーズ・ガソリンキャップ、ダウンドラフト式トリプル・ソレックス・キャブレターをカバーするためのボンネットのパワーバルジが、これが耐久レースのための車であることを示す。小さな開口部のドアから乗り込むのに若干苦労するが、乗り込んでしまえば直立した大径のスリースポーク・ステアリングに対峙したレザーのバケットシートはドライバーを包み込む。

ボディと同色にペイントされたクラッシュパッドのないダッシュパネルは簡素の極みだ。「彼らはル・マンでの競技中の反射を嫌い全てのクロームを室内から排除したのです」とウィルヘルムは指摘する。


 
圧縮比を高めたブリストル・エンジンがシングルマフラーから唸りを発する。クラッチは重めでギアシフトも同様だ。ラック&ピニオン・ステアリングには停止状態で少し遊びがあった。ギアシフトのストロークはACより短く、クラッチは若干シャープだ。ドライブすればそのたった780kgの軽さを瞬時に感じとることができる。ステアリングは正確、ブレーキは強力、全体は緊張感があり敏感だ。クーペトップは、オープンのエースにはない剛性をフレイザー・ナッシュに与えている。つまり、かなりの実用性を兼ね備えたレーシングカーだということができるよう。ウィルヘルムは、このエンジンがエースよりマイルドなチューニングだと思っているが、私にとっては似たものに感じる。
 
ザクセンを通過する高速の田舎道でも、フレイザー・ナッシュのリジットアクスルに欠点は感じなかった。この車はより早く走ればエースよりはタイトで軽い、そして反応が敏感。2台の車はステアリングとサスペンション以外は同じタイプのエンジンと似た構造のシャシーを共有しているがフレイザー・ナッシュはシャープなドライバーのための車だ、というのが私の感想だ。

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers )  Transcreation:Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers ) Words:Robert Coucher Photography:Jordana Schramm 取材協力:A.ランゲ&ゾーネ(www.alange-soehne.com )

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