ル・マンに挑むため設計された特別な車│航空力学的なボディの美しさと性能

Photography:Jordana Schramm

この記事は『興味深いヒストリ―を持っていた一台!英国製スポーツカー初の四輪独立懸架モデル ACエース』の続きです。

1954年、フレイザー・ナッシュ・"ル・マン・クーペ"シャシーナンバーFN197は、世界で最も有名な24時間耐久レースを戦うために特別に設計された。完成された9台のうち3台は実際にル・マンに参戦し、シャシーナンバーFN186は1953年にクラス優勝、総合13位、そして翌年には11位というヒストリーを刻んだ。

 
ル・マン・クーペは、英国車で唯一、タルガ・フローリオで優勝したオープン 2シーターのフレイザー・ナッシュ・タルガ・フローリオをベースに、ル・マンでの高速走行を考慮したクーペボディを被せたもので、軽飛行機に酷似したルーフラインの美しい曲線を持つボディは、その空力的な外観で目を引いた。

「エースと同じブリストル・エンジンなのにフレイザー・ナッシュはちょっと違うのがわかりますか。この車は極めてオリジナルを保っているので、エンジン出力はエースより低いのです。この車はアールズコートのショーカーだったので、ハイコンプレッション・エンジンとヒーターが売り物でした。それでエアベントがドライバー側にしかないのです。それ以外のベントは、バッテリーの搭載位置を変えたために埋めてしまったのです。ヒーターはまったく必要ないですから理解に苦しみますが、これはブリティッシュ・クラシックなので、風変わりな点だって少しはあるのでしょう。BMWの仕業だとは思わないですが⋯」とウィルヘルムは笑う。
 


フレイザー・ナッシュ初のクローズドボディを持つ生産車だったル・マン・クーペは、1953年に登場した。ACエースと同様の鋼管ラダーフレームと前輪独立懸架を特徴とし、ステアリングはラック&ピニオンに、トーションバー式後輪懸架になる。
 
FN197は有名な車なのでヒストリーはよく知られている。FN197の初代オーナーはアンソニー・トゥエンティマンで、圧縮比を通常の7.5から8.5に高めたハイコンプレッション・エンジン、調整式ラジエタースロット、センターロック式ワイヤーホイール、アルフィン・ドラムブレーキ、フライオフ式ハンドブレーキ、スライド調整式シート、ヒーター付きで発注し、1954年にアールズコート・ショーのために車をアーチボルト・フレイザー・ナッシュ(AFN)に貸し出した。1956年ごろまでFN197をレースに使ったあと1957年に走行距離が2万4000 マイルに達した時点で売却している。その後、数人の所有者を経て、2001年にピーター・ジェイが購入、現在の完璧なレストアを行った。

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers )  Transcreation:Kosaku KOISHIHARA (Ursus Page Makers ) Words:Robert Coucher Photography:Jordana Schramm 取材協力:A.ランゲ&ゾーネ(www.alange-soehne.com )

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