車と共に駆け抜ける。そんな生き方の手本 松田芳穂

Photography: Ryota SATO



当日は、午前10時くらいに来るよう言われ、緊張しながらも実際に訪ねてみると、待てど暮らせどお目当ての人物が現れない。結局、エンツォに会うことができたのは18時近くだったそう。その場では、デイトナ・スペチアーレを所有していることを話題にしたが、とてつもないオーラを放つエンツォはあまり興味を示さずに会社経営の話ばかりをしていたそうだ。長い待ち時間の末に話すことができた時間は30分足らずだったが、今でも良い思い出のひとつだという。その際に、アメリカで2枚織った大きな絨毯の1枚をエンツォにプレゼントし、もう1枚は今でも松田氏のオーディオルームで存在感を放っている。
 
エンツォ・フェラーリと関連することといえば、2005年に松田氏は「コメンダトーレ」の勲章(第二等)をイタリア共和国より授与されている。この勲章は、イタリア文化の発展に貢献した人物に授けられるもので、松田氏のフェラーリを通じて行ってきた貢献が称えられたのだ。「同じ勲章をエンツォ・フェラーリも授けられている」と、授賞の連絡を受けた際に知り、大きな喜びを感じたという。日本人でも同じ賞を授与されている人物は数名いるが、自動車関連領域では松田氏だけなのだ。「憧れ」以上の人物と同じ賞を授けられるとは、この上ない名誉であろう。実際に、その話をしている松田氏の姿は念願のプレゼントをもらった少年のように嬉しそうだった。


 
数多くのクラシックカーを実際に自分で走らせ人生を楽しんできた松田氏だが、現在はクラシック車両ではなく新型のフェラーリを楽しんでいる。もちろんクラシックモデルのほうが運転していると楽しいけれど、安全性や性能を考慮すると新しいモデルのほうが今の自分には合っているという。「充分に速く走るし、乗っていても楽しい。いま特に気に入っているのは812 スーパーファストですね。山道でも思うように走ってくれるんですよ」と話してくれた。これからラリーに参加する予定はないとのことだが、サーキットには時々顔を出しているそうだ。クラシックフェラーリの世界をとことん楽しんできたからこそ、感じることの出来る新型の魅力もあるのだろう。
 


また、発起人として創設したフェラーリ社公認のフェラーリ・オーナーズクラブ・ジャパン(FOCJ)では、現在は顧問として活躍している。フェラーリ・ブランチでは、自ら参加車両の案内を行い、一台一台見て周っているほど。
 
話を伺っている中で、松田氏は本当に心から車を愛し、どこまでも夢中なのだと心底感じた。これほどまでに、共に走りを楽しんでもらうことができるとは、車としても幸せなことだろう。何度も「車は一生やめられない」と口にし、「もっと車を楽しみましょう!」と声を大にして言う。また、「車は美術品とは違いますからね。最近は、買うだけ買って乗らずに、価値を高めるために綺麗なままで置いておく人が多いですが、それでは車の意味がありません。車は速く走れてこそのものです」とも話し、車と生きる一人の人間としてのお手本以外の何者でもない。

これからも、松田氏の車への情熱が消えることは決してないだろう。むしろ、さらに愛情が大きくなっていくに違いない。


また、オクタン編集部が全面協力し、松田芳穂氏のこれまでの歴史を一冊にまとめた『疾走』を50部限定で販売中。たくさんの貴重な資料を見ることができます。4台並んだフェラーリ 250GTOも必見。

『疾走』概要
価格:22,000円(消費税、配送料込み)
サイズ:30cm×30cm 
重さ:約2kg
ページ数:148ページ
※一冊ずつシリアルナンバー(〇〇/800)が記載されておりますが、今回の販売につきましてはランダムでの配送とさせていただきます。
販売数:50部(先着)
※数に限りがあるため、お一人様2部までとさせていただきます。
お申し込み:こちらのフォームより → https://form.run/@yoshiho-matsuda-sisso--1589167191

オクタン日本版編集部

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