北へ、南へ、シトロエン2CVと30年│第3回:シトロエン2CVとVWビートル徹底比較(その1)

シトロエン2CVに乗っていると、よく「ワーゲンですか?」と声をかけられる。海外旅行から戻った友人に「お土産だよ!」とビートルのミニカーをもらったことも一度や二度ではない。

第二次大戦後の自動車普及を支えた欧州車といえば、ドイツのVWビートル(type1)、イギリスのMINI、フランスのシトロエン2CV、そしてイタリアのフィアット500(チンクエチェント)であろう。いずれも長きに渡って生産され、そして今日に至るまで熱烈なファンを抱えている。

特に2CVとビートルは戦前に設計・試作が行われ、戦後の早い時期から欧州の路上を走り始めている点で共通している。そして数々の派生車を生み、後継車とされた車種よりも長きに渡って生産されたことなども似通っている。

しかしながら、少なくとも日本においてはビートルに乗っている人が「2CVですか?」と声をかけられることはないだろう。やはり知名度という点では2CVはビートルに敵わないことを認めざるを得ない。


ビートルですか?と声をかけてくれる人も、ビートルのミニカーのお土産をくれた人も、ニコニコしながら近づいて来るので、「いや、シトロエンです」とか「これは似ているけど違うんだよね」と答えて、その好意を無にするのは善良な筆者には少々心苦しい。2CVオーナーとしては、有名なビートルは少し癪に障るうえに、他人の好意を踏みにじりかねない困った存在なのである?!

そこで今回は「宿命のライバル」である2CVとビートルの検証を改めて行うことで、ビートルと似ているけど2CVという違う車があることを世の中にアピールしたいと思う。登場するのは以前、オクタン日本版編集部の社用車だった1975年VWビートルと、わが1990年シトロエン2CVだ。



VWビートル、シトロエン2CVとも第二次大戦前に「大衆車」として設計され、戦後すぐに量産が開始された。ともにフェンダーが独立している「戦前型」のフォルムを身にまとっており、現役バリバリだったのは60年代までで、それ以降は反権力だったりヒッピー文化だったり、そういった何かのアンチテーゼとして主に若者の間で支持された歴史も似通っている。



ビートルの開発時の要件は「大人2人と子供3人が乗ることができること」「巡航速度100km/h以上を保てること」などであった。当時からアウトバーンを構想していた工業国家ドイツらしい要件である。



一方の2CVは「50kgのジャガイモ又は樽を載せて走れること」「60km/hで走行できること」「荒れた農道を走破できるだけでなく、カゴ一杯の生卵を載せて荒れた農道を走行しても、1つの卵も割ることなく走れるほど快適で乗り心地がよいこと」と、農業国であるフランスの事情を反映したものだった。



この設計要件の違いが端的に表れているのは車両重量とエンジン排気量である。ビートルは登場時で700kg超、末期には900kg超の車重を持ち、空冷水平対向4気筒エンジンも1000ccでスタートし最終的には1600ccに達している。



これに対して2CVは登場時500kg弱、末期でも500kg台に収まる軽量なボディであり、空冷水平対向2気筒のエンジンも375ccからスタートし602ccで終焉を迎えた。

また、ビートルがリアエンジン・リアドライブなのに対して、2CVはフロントエンジン・フロントドライブであることも、この両車の際立った差異である。

文:馬弓良輔 Words: Yoshisuke MAYUMI

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