50年以上経っても恐ろしく速い!素晴らしいMGBのワークスカーに試乗

Photography :Tom Wood


 
MGBだって赫々たる成績を挙げていたが、BMC自身もさほどそれを宣伝しようとはしていなかった。おそらくはMGBがそもそも人気の高いモデルであり、手をかけなくても十分に売れると踏んでいたからだろう。彼らには他にも売るべき車があり、一般受けするエピソードにも事欠かなかったのだ。そんなわけで、生き残ったワークスMGBが熱心なファンによって正当に評価されるようになり、その結果価格がうなぎ上りになったのは、ごく最近のことである。
 
4台の元ワークスカーがグッドウッド・サーキットに集い、我々オクタン編集部もその場に招かれることになった。イベントの首謀者はバリー・シドニー スミス、このDRX255Cを40年以上にわたって所有しているエンスージアストである。この車はパディ・ホプカークとアンドリュー・ヘッジスによって、1965年のルマン24時間レースを戦い、ワークス904/4GTSに次いでクラス2位、総合11位に輝いた車そのものだ。


 
バリーと彼の仕事仲間がDRX255Cを手に入れたのは1969年のこと。きちんとレース仕様に仕立てられた車としてはかなり安かったという。バリーは1970年からこの車をひとりでずっと所有しているが、実は長いことそれを隠していなければならなかった。というのも、彼は既に別のレース用Bを持っており、DRX255Cのことを知ったら彼の父親が怒り出すことを恐れたのだという。
 
見た目にはワークスMGBと市販モデルに大きな違いはないように思えるが、それはいわば宣伝のために意図的に行われたもので、実際にはBMCのレース部門が作り上げたこの車は市販モデルとは比べ物にならないほど速いマシーンだ。DRX255Cのエンジン排気量は標準型よりほんのわずかに大きい1801ccだが、エンジンのパワーは95から130bhpまで増強されている。ギアボックスはクロスレシオの競技用、各ギアの歯はストレートカットで1速以外にはシンクロ付きだ。オーバードライブギアは備わらないが、非常に高い3.3:1のファイナルギアがいわゆるバンジョー型リジッドアクスルに組み込まれた。サスペンションも強化され、リアには調整式のレバー・ダンパーが備わる。またハードトップと21ガロン入り(約95ℓ)の長距離用燃料タンクによる重量増を埋め合わせるため、様々な箇所に軽量化の手が入っている。たとえばボンネットとフロントフェンダー、ドアパネルとトランクリッドはアルミニウム製である。

編集翻訳:高平高輝(ラムダ・インク) Transcreation: Koki TAKAHIRA (Lambda Inc) 原文翻訳:木下 恵 Translation :Megumi KINOSHITA Words :Tony Dron Photography :Tom Wood

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