50年以上経っても恐ろしく速い!素晴らしいMGBのワークスカーに試乗

Photography :Tom Wood


 
さらに、本来この車のボディ先端にはレース部門がルマン用に特別に開発したエアロダイナミックなノーズが取り付けられていた。これは最高速に絶大な効果を発揮したようで、1965年ルマンのミュルサンヌ・ストレートで計測された139mph(223.6km/h)が公式数値として残っている。同じタイプのノーズは60年代の他のワークスカーにも使用され、ル・マンが終わると倉庫に保管されたらしい。DRX255Cもルマンの後、直ちに標準仕様に戻され、そのまま現在に至っている。バリーは当然ながら、オリジナルのルマン・ノーズを手に入れようとしたが、BMCは必要なくなった時点で売却したらしく、残念ながらそのまま行方知れずになってしまっている。
 
バリーはルマン・クラシックにDRX255Cで出場した際に、そのノーズの効果を思い知らされたという。この車のエンジンはさらに強力な160bhpにまでパワーアップしているにもかかわらず、135mphで空気の壁に突き当たり、それ以上はどうやっても伸びなかったという。ちなみに当時存在しなかったシケインの影響ではない。この種の車にとっては残りのストレートでも十分に長いのだ。
 


バリーは今でもこの車で定期的にレースに参加しており、ジュリアス・サーグッドのHRDC(ヒストリック・レーシング・ドライバーズ・クラブ)のイベントにMGB50というレースシリーズを導入するよう働きかけたのも彼だ。もっともMGB50シリーズのタイトルは、アンディ・ニューオールが操縦した他の有名なワークスカー、8DBLロードスターにさらわれてしまった。
 
何とも有難いことに、グッドウッドを思いっ切り走っていいとバリーは言う。これほど完璧なレーシングMGBを運転するチャンスなど、この先もまずないだろう。言うまでもないことだが、コクピットを満たす音はノーマルとは全く異なる。エンジンの轟音以外にも、ストレートカットギアのヒーンという唸りが常に聞こえるのだ。
 

編集翻訳:高平高輝(ラムダ・インク) Transcreation: Koki TAKAHIRA (Lambda Inc) 原文翻訳:木下 恵 Translation :Megumi KINOSHITA Words :Tony Dron Photography :Tom Wood

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