50年以上経っても恐ろしく速い!素晴らしいMGBのワークスカーに試乗

Photography :Tom Wood



そして心から驚いたのは、このMGBはお世辞抜きに今なお恐ろしく速いこと。これは紛れもない本物のレーシングカーである。素晴らしいブレーキと完璧にバランスの取れたハンドリング、文句のつけようのないステアリングフィールのおかげで、グッドウッドのすべてのコーナーに100%の自信をもって飛び込んでいける。たとえば、業界ではちょっと知られたセントメアリーズ・コーナーに向かう右コーナー。

ここは競争相手を出し抜くいいポイントなのだが、足回りが決まっていないと、姿勢を乱したまま次のセントメアリーズにアプローチすることになる。バリーのMGBは、この連続コーナーにピタリと安定したまま飛び込んでいくことができた。これぞ、ごくわずかな人しか気づいていない、コンペティション・マシーンとしてのMGBのもうひとつの顔である。素晴らしく操りがいのあるその性能は、BMCワークスカーとしての輝かしいヒストリーと同じように称えられるべきものだ。

 
このような抜群のコンディションのMGBを運転すると、いつも同じ思いにとらわれる。ノーマルMGBのオーナーたちは運転する楽しさをみすみす逃していることに気付いていないに違いない。もちろんDRX255Cのようなワークスカーの完璧なコピーを作ろうとすれば高くつくけれど、スタンダードのMGBを少しだけ速く、そしてハンドリングを磨き上げるには、ほとんどコストはかからない。操縦性はもっとも重要な点だが、それを適切にチューンするには何も特別なパーツを買う必要はない。それは純粋にセッティングの問題であり、レース経験のある本物のMGBスペシャリストであれば、ごくわずかな費用で仕上げることのできるものだ。
 
私の経験から言えば、MGBはリアの車高とステアリング・ジオメトリーについてとりわけ敏感であり、また適切なサイズのフロント・スタビライザーを選ぶことも大切だが、それは難しいことではない。これらに注意すれば、どんなMGBも見事なコーナリングを見せるはずである。では、私が長年運転してきた数多くのMGBロードカーがあやふやなステアリングフィールと心許ないハンドリングしか持たないのはなぜなのか?きっとハンドリングを重要視するオーナーがほとんどいないということなのだろう。ただ見た目が綺麗であればそれで満足なのだろうか?私にはそれが理解できない。宝の持ち腐れとはまさしくそういうことではないだろうか?

編集翻訳:高平高輝(ラムダ・インク) Transcreation: Koki TAKAHIRA (Lambda Inc) 原文翻訳:木下 恵 Translation :Megumi KINOSHITA Words :Tony Dron Photography :Tom Wood

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