30年以上行方不明になっていた歴史あるワークスカー│マラソン・デラ・ルート・カー

Photography :Tom Wood

MGBは高い走行性能を誇っていながらなかなか陽の目を見なかった名車だ。Octane編集部がMGレース部門全盛期における最高の老兵4台を紹介する。
<1964年ワークス・マラソン・デラ・ルート・カー編>

事実上の長距離公道レースである「マラソン・デラ・ルート」用に1964年8月に完成したワークスカー。ジュリアン・ベルナーブとデイヴィド・ハイアム組が出場したが、トランスミッション・トラブルでリタイアした。


同年のイベントはスパ‐ ソフィア-リエージュを結ぶ公道コースで行われた最後の“マラソン”だった。BRX854Bは同じ年のRACラリーにジョン・フィッツパトリックとジョン・ハンドレー組によって出場し、アクシデントまたはガスケット・トラブルでリタイアしたと伝えられているが、これは正しくない。ピーター・ブラウニングの著わした「The Works MGs」によれば、彼らは白樺の植林地の中に高速でコースアウトしたものの、苗木を根こそぎ抜いて道を作って脱出に成功した。



だがそのすぐ後、クラッチの故障でリタイアを余儀なくされたという。BRX854Bは少なくともひとつ、大きな戦果を挙げている。厳密にはプライベート・エントリーだが、1965年のカストロール・ドナウ・ラリーで、ケン・タブマン/ジョージ・ステファノフ組がクラス3位、総合13位に入賞しているのだ。その後、この車は2000年代になってレストアされるまで、30年以上も行方不明状態だった。バリー・シドニー‐ スミスを含む専門家の助言によって修復されたこの車は、2008年のルマン・クラシックに参加、グループ3位の成績を残している。現在のオーナーのポール・キャンプフィールドはこの車を2010年のブルックランズ・オークションで手に入れた。



非常に美しくレストアされてはいるが、オーナーも認めるように、サスペンションなどはまだ手を加える必要があるようだ。高速コーナーでは若干揺れが残り、良い状態のレーシングMGBが持つ落ち着きに欠けるのだ。カウンターを当てると操舵力が増すことから、キャスターが大きすぎるのかもしれない。もっともこれらの点は容易に修正できるはずだ。BRX854Bはコレクターズアイテムである以上に重要な歴史の証人である。現代のレースでも勝てるように完璧に仕上げるにはかなり費用がかかるかもしれないが、それはまた別の考え方。このままでも十分に価値がある車なのだ。

編集翻訳:高平高輝(ラムダ・インク) Transcreation: Koki TAKAHIRA (Lambda Inc) 原文翻訳:木下 恵 Translation :Megumi KINOSHITA Words :Tony Dron Photography :Tom Wood

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