カラーが人々に及ぼす大きな影響│クリエイティビティ向上や車選びにも見られる傾向

Porsche AG

フランス人のカラー・デザイナー、ジャン=ガブリエル・コースは「世間は色のもつ圧倒的なパワーを過小評価している」という。そんな彼が思うポルシェに相応しいカラーはオレンジ。色と車の関係を聞いた。

・まず、コースさんが愛用しているターコイズ色のスクーターについて教えてください。この色を選んだ理由は?
ターコイズは、文化の多様性と若々しさを象徴する色です。青々としたラグーンを眺めるだけで自然と癒されるように、ターコイズが放つ軽快で明るい印象は、スクーターで街を移動する時の感情とマッチするのです。


・ターコイズはお気に入りのカラーなのですか?
毎朝見るボディーシャンプーのボトルのオレンジも、その後に着るジャケットのブルーも大好きです。私のお気に入りのカラーは一定ではありません。


・一般的に人気が高いのはどんな色ですか?
さまざまな文化を超えた一番の人気色はブルーです。これは空の色に関係しているのかもしれません。


・そもそも “色” とはなんでしょうか?
物理的な観点からいうと、“さまざまな電磁波が混合されて目に見えるもの” です。人間の眼の網膜がこの混合した光を信号に変換し、神経を伝って脳へ送られ、視覚中枢で処理が行われた結果ようやく色として認識されます。色というものが主観的になるまでの過程は決して単純ではないので、色の印象は人によって異なるのでしょう。


・しかし自動車の人気色など、不特定多数の好みが一致することもありますよね。
購入者の60%が車を色で決めているという調査結果もあります。しかし、だからといって皆が好きな色の車を購入しているわけではないようで、控えめで落ち着いたトーンが好まれる傾向にあります。数十年前はレッド系の人気が高かったのですが、時代と共にホワイト、ブラック、シルバー、そしてグレーと変わってきました。


・落ち着いたトーンが好まれるようになった結果として、ホワイトが人気なのでしょうか。
昔はカラフルな色調が裕福の象徴とされていました。シックなカラーの紳士服がポピュラーになってきたのは19世紀に入ってからなのです。20世紀には女性もダークカラーの洋服を身に纏うようになります。有名なファッションアイコン、ココ・シャネルの “リトル・ブラック・ドレス” がよい例ですね。おもしろいことに、同じ現象が建築やインテリアデザインにもみられます。50~60年前、家の壁を白く塗る人はいませんでしたが、いつしかそれがスタンダードになっていきます。車も同様で、さらに安全面での性能も加味されました。白は様々な光の中でも特に認識されやすい色なので、ホワイトカラーの自動車は事故を引き起こす確率が低いのです。




・人気色が変化した背景についてどう思われますか。
ホワイトはとても控えめで落ち着いた色なので、多くの人に受け入れられるのでしょう。ホワイト、ブラック、シルバー、グレーというカラーは、移動の際に目立ちたくないと考える人にとって最適なチョイスです。


・なんだかさびしい気もしますね。
ハバナを訪れたツーリストのほとんどが、この都市の自動車のカラーを絶賛します。というのも派手なカラーとデザインを競い合っていた頃のクルマが、今でもまだ現役で走っているからです。1960年代から70年代にかけての時代は、パリやシュトゥットガルトの街中にも同じように派手な車が普通に走っていました。色が放つ存在感と効果を、昔のほうが有効に活用していたともいえますね。


・色にはどのような影響力があるのでしょうか?
色が与える影響については、これまで数多くの研究が行われてきました。たとえば、山登りで着用するアノラックのカラーに暖かみを感じるレッドを採用することで寒さを感じる度合いが低くなるなど。パソコンのスクリーンの壁紙がブルーだと、よりたくさんのアイディアが生まれる、というのもあります。ちなみにこの研究によれば、壁紙を赤に置き換えた場合と比べ て2倍のクリエイティブ効果があるとされています。色には想像を超えたパワーがあるのです。生物学的にも、心理的にも、文化的そして個人的にも色は少なからぬ影響を及ぼすのです。


・色のパワーについて、具体的に説明をお願いします。
赤は様々な文化の中で攻撃性と強さを象徴する色として認識されています。そして動物界においても同じことがいえるようです。例えば、フィンチ科の小鳥が同種の赤い羽根の鳥に遭遇したとき、血中のストレスホルモンのコルチコステロンが58%も増加するそうです。つまり赤は可視光線を上回り、ダイレクトに物理的作用を及ぼす色といえます。赤は危険を警告する色です。幼い子ですら “禁止標識は常に赤色” だということを当たり前のように理解しています。また、赤はイタリアのスポーツカーを連想させますが、これは自然の法則ではなく歴史的背景による偶然といえます。


・文化的要因とはなんでしょうか?
1900年に開催された有名なモーターレース “ゴードン・ベネット・カップ” では、イギリスに “ブリティッシュ・レーシング・グリーン” が、フランスはブルー、ドイツはホワイト、そしてイタリアにはレッドのナショナルカラーが指定されました。この文化的背景を知っている私は、ポルシェを購入するとしてもレッドは選びません。私のイメージ上、ドイツ製のスポーツカーにレッドという色は不釣り合いなのです。


・では、ポルシェにはどんな色がふさわしいと思いますか?
絶対にオレンジですね。子供時代にオレンジ色のポルシェをよく目にした記憶が大きく影響しているのかもしれません。色の好みは個人的要因に大きく影響されます。ほんの小さな体験から一生を通じての色の好みが決まるのです。


・モノトーンカラーのスポーツカーはあまり目にしないですよね。
スポーツカーは、悦びや楽しみといった晴れやかな気持ちの対象だからでしょう。そして多くのスポーツカーは素晴らしくて美しい。ですが私はポルシェ 911のエレガントなフォルムだけでは満足しません。それを引き立てながらも負けないボディカラーが必要です。我々はカラフルな色彩に対してもっと勇気を持たなければなりません。「人生をカラーで夢見よう、これは幸福の秘訣である」と語ったウォルト・ディズニーの格言は真実なのです。

オクタン日本版編集部

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