「腐食しやすい」と悪名が高かった車とは?洗練されたイタリアン・エステート

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ランチア・ベータは腐食しやすいという悪名が高く、少なくともイギリスでは、それがランチアの悲惨な転落につながった。しかし、ベータHPEのデザインと実用性は今も昔も魅力的だ。HPEはハイ・パフォーマンス・エステートの略である。コンセプト自体は以前からあったが、ランチアのようにニッチなエステートワゴンを主要ラインアップに加えたメーカーはごくわずかだ。ベータにはほかにベルリーナ、クーペ、スパイダーがあった。

ランチアが1969年にフィアット傘下に入ると、エンスージアストの間には不安も漂った。しかし、1972年に登場したベータで、心配が無用だったことが分かった。コスト面に(幾分)慎重なフィアットの元で開発された最初のモデルだったが、ランチアのエンジニアには大きな自由が与えられ、その結果、フルヴィアの後継にふさわしい先進的な前輪駆動モデルが生まれた。フィアットのツインカムエンジンを使用することだけは要求されたものの、ランチアに不服はなく、フルヴィアのV4を開発したエットーレ・ザコーネ・ミーナが、素晴らしいランプレディ設計の直列4気筒ユニットに必要な変更を施した。

1973年にはベルリーナに続いてまったく異なるクーペが登場する。完全に新しいボディワークは、フルヴィアのデザイナーであるピエトロ・カスタネーロの指揮の下、アルド・カスターニョがデザインした。プラットフォームの短縮を除けば、やはり完全な4シーターで、同じ1.6か1.8lの4気筒エンジン、前後とも独立懸架、4輪ディスクブレーキを装着する点は同じだ。

"標準的" なクーペは、シリーズ拡大の始まりにすぎなかった。続いてピニンファリーナがデザインしザガートが製造するスパイダーが登場し、同じ年にHPEも加わってラインナップが完成した。HPEでは実用性を高めるため、ベルリーナの長いホイールベースと柔らかめのサスペンションを使用し、快適性と乗員スペース、ラゲッジ容量を最大限に確保した。とはいえBピラーより前はクーペと同じで、ドアには独特の窓枠が付いた。

1978年には、ベータの全モデルでエンジンがアップデートされ、1.6か2リッターが選べるようになり、オプションにオートマチック・トランスミッションとパワーステアリングが加わった。その1年後、HPEは独自モデルとなって、バッジからベータの文字が消えた。また1981年末からは、最上位の2リッターモデルに燃料噴射式が加わった。

1983年6月、わずかなフェイスリフトと共に、究極モデルのVXが登場する。ヴォルメックスの名でも知られるこのフラッグシップモデルは、ルーツ式スーパーチャージャーの搭載で、出力が135bhpに向上した。外観の変更はわずかだが、ボンネットのパワーバルジとフロントスポイラー、テールゲートの控えめなダックテールが目印だ。大きなパワーアップはなかったが、トルクは148lb-ftへと目に見えて増強され、硬めのスプリングが接地感の改善につながった。HPEヴォルメックスの製造数は2370台で、そのうちイギリスに渡った右ハンドル仕様は186台のみである。

ベータの生産はすべて1984年に終了した。錆やすいという悪評はもっともなもので、それを理由にシリーズ全体を否定的に捉える向きもある。しかし、35年以上も生き残った1台が見つかれば、洗練された生き生きとした走りを存分に楽しめる可能性が高い。それこそが、このスタイリッシュでコンパクトなイタリアン・エステートの本来の魅力なのだ。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) Translation:Megumi KINOSHITA

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